目次
1、まとめ
•どんな病気?
蕁麻疹は、突然赤く盛り上がった発疹(膨疹)とかゆみが現れ、数十分から24時間以内に跡を残さず消える皮膚の病気です。急性と慢性があり、慢性では原因が特定できないことも少なくありません。
• 診断
症状の経過や発疹の特徴を詳しく伺うことが診断の中心です。必要に応じて血液検査やアレルギー検査を行い、他の病気が隠れていないか確認します。
• 治療
治療の基本は抗ヒスタミン薬の内服です。症状に応じて薬を調整し、改善が乏しい場合にはゾレア(オマリズマブ)などの治療も検討します。
• 日常生活の注意点
疲労や睡眠不足、ストレス、飲酒、発熱、入浴などで悪化することがあります。規則正しい生活を心がけ、悪化するきっかけを見つけることが大切です。
• その他
呼吸が苦しい、のどが締め付けられる、唇や舌が急に腫れるなどの症状はアナフィラキシーの可能性があり、すぐに救急受診が必要です。
2、蕁麻疹とはどんな病気?
蕁麻疹は、突然皮膚が赤く盛り上がり、強いかゆみを伴う病気です。皮膚を蚊に刺されたように膨らんだり、地図のように広がったりしますが、多くは数十分から24時間以内に跡を残さず消えてしまうことが特徴です。
症状が消えても安心とは限りません。場所を変えながら新しい発疹が現れることも多く、「治ったと思ったら別の場所に出てきた」という経過をたどることも珍しくありません。
発症から6週間以内を急性蕁麻疹、6週間以上続くものを慢性蕁麻疹と呼びます。慢性蕁麻疹では、毎日のように症状が出たり消えたりを繰り返すことがあり、生活の質を大きく低下させることがあります。
また、皮膚症状だけではなく、まぶたや唇が大きく腫れる「血管性浮腫」を伴うことがあります。さらに、息苦しさや腹痛、血圧低下などを伴う場合にはアナフィラキシーの可能性があり、緊急の治療が必要です。
3、蕁麻疹の種類
蕁麻疹にはさまざまなタイプがあります。
最も多いのは、特別な原因が見つからない特発性蕁麻疹です。慢性蕁麻疹の大部分を占め、体質や免疫の異常が関与していると考えられています。
一方、特定の刺激で起こる誘発性蕁麻疹もあります。寒さで出る寒冷蕁麻疹、温まることで出るコリン性蕁麻疹、圧迫によって起こる遅延圧蕁麻疹、皮膚をこすると線状に盛り上がる皮膚描記症などが代表的です。
食べ物や薬剤が原因となるアレルギー性蕁麻疹や、果物・野菜を食べた直後に口の中がかゆくなる口腔アレルギー症候群(OAS)、食後の運動で起こる食物依存性運動誘発アナフィラキシーなども重要です。
どのタイプであるかによって治療や生活上の注意点が異なるため、原因をできるだけ見極めることが大切です。
4、蕁麻疹の診断
蕁麻疹は、多くの場合、診察時の皮膚所見と問診で診断できます。
実際には診察時に発疹が消えていることも少なくありません。そのため、
• どのような発疹だったか
• どのくらいで消えたか
• 毎日出るのか
• 食事や運動との関係はあるか
• 飲んでいる薬はあるか
などを詳しく伺います。
スマートフォンで発疹を撮影していただくと、診断に大変役立つことがあります。
5、蕁麻疹の原因・誘因
蕁麻疹は、皮膚にある「肥満細胞(マスト細胞)」からヒスタミンなどの炎症物質が放出されることで起こります。
しかし、「なぜヒスタミンが放出されるのか」は患者さんごとに異なります。
原因が明らかな場合もありますが、慢性蕁麻疹では約7~8割が原因不明とされています。
食べ物だけが原因と思われがちですが、実際には、
• 疲労
• 睡眠不足
• ストレス
• 風邪などの感染症
• 発汗
• 入浴
• 飲酒
• 気温差
• 圧迫や摩擦
など、さまざまな要因が重なって発症することが少なくありません。
そのため、「何を食べたか」だけでなく、「どんな生活を送っていたか」も診断の大切な手掛かりになります。
6、アレルギー性蕁麻疹
アレルギー性蕁麻疹では、特定の食べ物や薬剤などに対するIgE抗体が反応し、ヒスタミンが大量に放出されます。
代表的な原因には、
• エビ・カニ
• そば
• 小麦
• 卵
• ピーナッツ
• 牛乳
• 一部の薬剤
などがあります。
食べるたびに毎回症状が出ることが特徴で、多くは摂取後数分から2時間以内に発症します。
7、アレルギー以外が原因の蕁麻疹
慢性蕁麻疹の多くはアレルギーではありません。
体調不良や感染症、ストレス、自律神経の乱れなどが関与し、肥満細胞が刺激されることで症状が起こります。
また、
• 痛み止め(NSAIDs)
• アルコール
• 発汗
• 温熱
• 圧迫
• 寒冷刺激
なども悪化因子になります。
「食べ物を変えても治らない」という方では、生活習慣や薬剤の見直しが重要になることがあります。
8、必要に応じて行う検査
蕁麻疹では、全員に検査が必要なわけではありません。
症状や経過から必要と判断した場合に、
• アレルギー検査(特異的IgE)
• 炎症反応
• 甲状腺機能
• 自己抗体
• 肝機能・腎機能
• 感染症
などを調べます。
慢性蕁麻疹では、検査をしても原因が見つからないことは決して珍しくありません。そのため、検査結果だけに頼るのではなく、症状をしっかりコントロールしていくことが治療の中心になります。
9、蕁麻疹の治療
蕁麻疹の治療で最も大切なのは、「かゆみが出た時だけ薬を飲む」のではなく、症状を起こさせない状態を維持することです。特に慢性蕁麻疹では、発疹が出てから薬を飲むよりも、毎日決まった時間に内服を続ける方が良好なコントロールが期待できます。
抗ヒスタミン薬(治療の基本)
蕁麻疹治療の中心となるのが抗ヒスタミン薬です。ヒスタミンが皮膚の血管や神経に作用するのを抑え、かゆみや膨疹を予防します。
現在主に使用されている第二世代抗ヒスタミン薬は、以前の薬に比べて眠気が少なく、長期間服用しやすいことが特徴です。
症状や生活スタイルに合わせて、
• ビラノア
• デザレックス
• ルパフィン
• ザイザル
• アレグラ
• クラリチン
• アレジオン
などを使い分けます。
「眠気が心配」「車を運転する」「受験勉強中」など、それぞれの生活背景を考慮しながら最適な薬をご提案します。
十分な効果が得られない場合には、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されているように、抗ヒスタミン薬を増量したり、別の薬へ変更したりします。
その他の内服薬
抗ヒスタミン薬だけで十分改善しない場合には、病状に応じて他の薬を追加することがあります。
例えば、
• H₂ブロッカー
• ロイコトリエン受容体拮抗薬
• 抗プラスミン薬(トラネキサム酸)
• 漢方薬
などが選択肢になります。
急激に悪化した急性蕁麻疹では、短期間だけステロイド内服を行うこともありますが、慢性蕁麻疹では長期間のステロイド内服は副作用の面から一般的にはおすすめされません。
患者さんの中には「薬をずっと飲み続けると効かなくなるのでは?」と心配される方もいらっしゃいます。しかし、抗ヒスタミン薬には一般的な意味での「依存性」はなく、症状が落ち着けば少しずつ減量・中止できることが多いため、必要以上に心配する必要はありません。
10、ゾレア(オマリズマブ)による治療
「毎日薬を飲んでも良くならない」「何種類も薬を飲んでいるのにかゆくて眠れない」という方に、新しい治療選択肢となるのがゾレア(一般名:オマリズマブ)です。
ゾレアは、生物学的製剤(バイオ製剤)と呼ばれる注射薬で、アレルギー反応のきっかけとなるIgEという物質に直接作用します。
IgEの働きを抑えることで、肥満細胞からヒスタミンが放出されにくくなり、蕁麻疹そのものが起こりにくい状態を作ります。
難治性の慢性特発性蕁麻疹に対して高い効果が報告されており、「長年悩んでいたかゆみがほとんど出なくなった」という患者さんも少なくありません。
当院では、ガイドラインに沿って適応を判断し、必要な方にはゾレア治療をご提案しています。
治療は通常4週間ごとに皮下注射を行います。
保険適用となりますが、薬剤費は比較的高額です。ただし、高額療養費制度を利用することで自己負担を軽減できる場合があります。
なお、ゾレアは12歳以上の慢性特発性蕁麻疹が適応となっています。
11、当院の蕁麻疹治療への考え方
蕁麻疹は「薬を出して終わり」の病気ではありません。
患者さんによって、
「眠気をできるだけ避けたい」
「仕事中に薬を飲めない」
「毎日薬を飲みたくない」
「受験が近い」
「妊娠を希望している」
など、それぞれ事情が異なります。
当院では、一人ひとりの生活スタイルを大切にしながら、無理なく続けられる治療をご提案しています。
また、「原因を知りたい」というお気持ちにもできる限りお応えし、必要な場合には血液検査やアレルギー検査を行います。
薬だけに頼るのではなく、生活習慣や悪化因子も一緒に見直しながら、できるだけ早く快適な生活を取り戻せるようサポートいたします。
12、日常生活で気をつけること
蕁麻疹は日常生活のちょっとした刺激で悪化することがあります。
まず大切なのは睡眠不足や疲労をためないことです。体調が崩れると症状が悪化しやすくなります。
また、熱いお風呂や長時間の入浴、飲酒、激しい運動は血流が増えることでかゆみを強くすることがあります。症状が出やすい時期は、ぬるめのお風呂を短時間で済ませることをおすすめします。
皮膚を強く掻いたり、締め付けの強い衣類を着たりすると、それだけで蕁麻疹が誘発される方もいます。肌への摩擦を減らすことも大切です。
食事については、慢性蕁麻疹では必要以上の食事制限はおすすめしていません。明らかに毎回症状が出る食品がある場合を除き、バランスの良い食生活を心掛けましょう。
ストレスを完全になくすことは難しいですが、適度な休息や趣味の時間を作ることも、症状の安定につながることがあります。
13、よくある質問(Q&A)
Q. 蕁麻疹は何時間くらいで消えますか?
A. 一つひとつの蕁麻疹は、多くの場合30分から数時間、長くても24時間以内には跡を残さず消えます。しかし、別の場所に新しい蕁麻疹が現れるため、「ずっと出続けている」と感じることがあります。
逆に、一つの発疹が24時間以上同じ場所に残る場合は、蕁麻疹ではなく蕁麻疹様血管炎など別の病気の可能性もあるため、一度皮膚科で相談することをおすすめします。
Q. 毎日薬を飲んでも大丈夫ですか?
A. はい、大丈夫です。
慢性蕁麻疹では、症状を抑えるために毎日抗ヒスタミン薬を内服することが標準治療です。
「飲み続けると効かなくなるのでは?」と心配される方もいますが、そのような心配はほとんどありません。症状が安定すれば少しずつ減量し、中止できる方も多くいらっしゃいます。
Q. 蕁麻疹は一生治らない病気ですか?
A. いいえ。
急性蕁麻疹は数日から数週間で改善することがほとんどです。
慢性蕁麻疹でも、多くの患者さんは数年以内に自然に改善するとされています。個人差はありますが、「ずっと治らない」と悲観する必要はありません。治療を続けながら症状をコントロールし、最終的に薬が不要になる方も少なくありません。
Q. 血液検査をすれば原因は分かりますか?
A. 必ず分かるわけではありません。
慢性蕁麻疹では、血液検査を行っても原因が見つからないことが多くあります。
そのため、「検査が正常だから異常がない」というわけでも、「原因が分からないから治らない」というわけでもありません。症状の経過や生活習慣を含めて総合的に判断することが大切です。
なお、蕁麻疹に合併しやすい体の異常(膠原病、甲状腺疾患、肝機能異常など)もありますので、併せて検査する場合があります。
Q. 蕁麻疹が出たら冷やした方がいいですか?
A. はい。
冷たいタオルや保冷剤をタオルで包んで軽く冷やすと、かゆみが和らぐことがあります。
ただし、寒冷蕁麻疹の方では逆に悪化することがあるため、冷やして症状が悪化する方は避けましょう。
Q. お酒は飲んでも大丈夫ですか?
A. 症状が落ち着いている時であれば少量なら問題ない方もいます。
しかしアルコールは血管を広げ、ヒスタミンの作用を強めるため、蕁麻疹を悪化させることがあります。
特に症状が出ている時期は控えることをおすすめします。
Q. 運動しても大丈夫ですか?
A. 薬剤でコントロールが良好の場合は通常の運動は問題ありません。
ただし、汗や体温上昇で悪化するタイプや、食物依存性運動誘発アナフィラキシーが疑われる方では注意が必要です。
食後すぐの激しい運動で症状が出る方は、一度皮膚科へご相談ください。
Q. 温泉やプールには入れますか?
A. 基本的には入れます。
蕁麻疹は感染症ではないため、人にうつることはありません。
ただし、熱いお湯や長時間の入浴で悪化する方もいますので、ぬるめのお湯で短時間の入浴がおすすめです。
Q. ワクチン接種はできますか?
A. ほとんどの場合、接種できます。
慢性蕁麻疹があることだけを理由にワクチンを受けられないことは通常ありません。
ただし、過去にワクチンで強いアレルギー反応を起こしたことがある方は、事前に医師へご相談ください。
Q. 妊娠中でも治療できますか?
A. はい。
妊娠中でも使用しやすい抗ヒスタミン薬があります。
一方で、妊娠中には避けた方がよい薬もあるため、自己判断で市販薬を使用せず、必ず医師に相談してください。
Q. 授乳中でも薬は飲めますか?
A. 授乳中でも使用可能な抗ヒスタミン薬があります。
赤ちゃんへの影響を考慮しながら薬を選択しますので、授乳中であることを診察時にお伝えください。
Q. 子どもの蕁麻疹も同じ治療ですか?
A. 基本的な考え方は同じですが、年齢や体重に合わせて薬の種類や量を調整します。
小児では感染症がきっかけで一時的に蕁麻疹が出ることも多く、数日で改善することも少なくありません。
Q. 掻いてはいけませんか?
A. 掻くことでさらにヒスタミンが放出され、症状が悪化することがあります。
また、皮膚をこするとその部分だけ蕁麻疹が出る「皮膚描記症」を合併している方もいます。かゆみが強い時は掻くよりも冷やす方がおすすめです。
Q. ゾレアは一度始めたらやめられませんか?
A. いいえ。
症状が十分に落ち着けば、医師と相談しながら間隔を延ばしたり中止したりすることが可能です。
病状をみながら最適なタイミングで調整していきます。
Q. ゾレアはすぐ効きますか?
A. 個人差があります。
早い方では初回注射後から改善を実感しますが、数か月かけて徐々に効果が現れる方もいます。
Q. ストレスだけが原因なのでしょうか?
A. いいえ。
ストレスは悪化要因の一つですが、それだけが原因ではありません。
体質や免疫、感染症、疲労、睡眠不足など、複数の要因が重なって発症することが多い病気です。
合は、適切な内服治療を受けることで生活の質が大きく改善することがあります。
Q. 呼吸が苦しい時はどうすればいいですか?
A. 呼吸困難、のどの締め付け感、声がかすれる、舌や唇が急激に腫れる、意識が遠のくような症状は、アナフィラキシーの可能性があります。
このような場合は様子を見ず、救急車を呼ぶ、または直ちに救急外来を受診してください。
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