1、突然の脱毛に気づいた方へ

「美容院で初めて指摘された。」

「髪を乾かしていたら地肌が見えて驚いた。」

「子どもの髪を結んでいて、丸く抜けていることに気づいた。」

「このまま全部抜けてしまうのではないかと不安。」

円形脱毛症は、ある日突然見つかることが多い病気です。痛みもかゆみもないことが多いため、気づいた時にはすでに脱毛斑がはっきりしていることも少なくありません。

脱毛という見た目の変化は、ご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな不安になります。

しかし、円形脱毛症は決して珍しい病気ではありません。

軽症で自然に改善する方もいれば、適切な治療によって発毛が期待できる方も多くいらっしゃいます。ただ、円形脱毛が難治なのも事実です。

下高井戸駅前皮膚科クリニックでは、医学的エビデンスに基づいた複数の治療を組み合わせて積極的に円形脱毛の治療にあたっております。

2、円形脱毛症とは?

円形脱毛症は、自己免疫の異常によって毛根が攻撃され、突然脱毛が起こる病気です。

「10円玉くらいの脱毛」というイメージを持たれることが多い病気ですが、実際にはさまざまなタイプがあります。

小さな脱毛斑が1つだけできることもあれば、複数の脱毛斑が同時に出現することもあります。さらに進行すると、頭髪全体が抜けたり、眉毛やまつ毛、ひげ、体毛にまで脱毛が及ぶこともあります。

子どもから高齢者まで、年齢を問わず発症します。

日本皮膚科学会のガイドラインでは、生涯のうち約2%の方が経験するとされており、決して珍しい病気ではありません。

そして、治療してすぐに治るのが難しい病気でもあります。

3、円形脱毛症の原因

以前は「ストレスで髪が抜ける病気」と考えられていました。

もちろん、強いストレスや睡眠不足、体調不良などが発症や悪化のきっかけになることはあります。

しかし、現在では、「毛包に対する自己免疫反応」が中心的な病態と考えられています。

本来、成長期の毛包は自分の身体の免疫から守られています。しかし、この免疫特権が破綻すると、リンパ球が毛包を異物と誤認して、免疫のバランスが一時的に乱れ、自分の毛包を刺激してしまうことで脱毛が起こります。「いわゆる自己免疫疾患(自分の体の組織を誤って攻撃してしまう病気)の一種です。

また、円形脱毛症の方では、以下の病気を合併することがあります。

・アトピー性皮膚炎

・気管支喘息

・アレルギー性鼻炎

・甲状腺疾患

・膠原病

・亜鉛欠乏

・梅毒

円形脱毛症は、体質や免疫のバランスと深く関わっているため、上記のようにアレルギー疾患や甲状腺の病気などを併発しているケースがあります。また、見た目が似ている他の原因(栄養不足や特定の感染症など)が隠れていないか、必要に応じて血液検査などで詳しく調べることもあります。

4、円形脱毛症の種類と症状

最も多いのは「単発型」です。

頭の一部に、境界のはっきりした脱毛斑が1か所できます。

しかし、円形脱毛症にはさまざまな病型があります。

単発型

1か所のみ脱毛するタイプです。

比較的予後は良好です。

多発型

複数の脱毛斑が同時にみられるタイプです。

再発を繰り返すことがあります。

蛇行型

後頭部から耳の後ろにかけて、帯状に脱毛するタイプです。

治療期間が長くなることがあります。

全頭型

頭髪全体が脱毛する重症型です。

汎発型

頭髪だけでなく、

* 眉毛

* まつ毛

* ひげ

* わき毛

* 陰毛

など、全身の毛が抜けるタイプです。

5、円形脱毛症の診断

多くの場合は診察とダーモスコピー(拡大鏡)で診断できます。

必要に応じて、

* 血液検査(甲状腺機能、貧血、自己抗体、亜鉛、感染症など)

* 真菌検査(しらくもとの鑑別)

* 皮膚生検

などを行います。

また、脱毛には、

* AGA

* FAGA

* 抜毛症

* 休止期脱毛

* 頭部白癬

* 梅毒

* 膠原病

などさまざまな原因があります。

「本当に円形脱毛症なのか」を確認することも重要です。

ダーモスコピー所見

活動期では感嘆符毛、黒点、断毛などがみられ、固定期では活動性の所見が少なく黄色点が目立つことがあります。回復期になると、短いうぶ毛や再生毛がみられるようになり、発毛のサインと考えられます。
病期の評価基準

回復期(改善中): 「短い軟毛(うぶ毛)」がパラパラと、あるいは群生して見られるようになる。

活動期(進行中): 「感嘆符毛」「黒点」「断毛」が多数見られ、毛髪牽引試験(Pull test)も陽性になる。

固定期(慢性期): 抜け毛は落ち着いているが、毛が生えない状態。「黄色点」が目立ち、活動期の毛(感嘆符毛など)は見られない。

6、円形脱毛症の治療

円形脱毛症の治療は難治のため一つではありません。

症状の広さ、進行速度、年齢などによって組み合わせて行います。


外用療法

ステロイド外用薬は基本治療の一つです。炎症を抑え、毛包への免疫反応を鎮めます。

フロジン(カルプロニウム塩化物)外用を併用することもあります。


内服治療

セファランチンやグリチロンなどを補助的に用いることがあります。


局所注射

限局した脱毛斑では、ステロイド局所注射が有効な場合があります。

成人では高い発毛効果が期待できる治療です。


液体窒素療法

脱毛部への刺激療法として行われることがあります。


局所免疫療法

人工的に軽いかぶれを起こし、免疫反応を調整する治療です。

広範囲の脱毛で検討されます。

7、エキシマライト(光線療法)について

「薬を塗っているのに変わらない。」

「注射はできれば避けたい。」

「子どもにも受けやすい治療があれば。」

そんな時に選択肢となるのが、

エキシマライト(ターゲット型ナローバンドUVB)

です。

保険適用で受けられる光線治療で、脱毛部だけに高出力の紫外線を照射します。

異常な免疫反応を落ち着かせることで、発毛を促します。

特に、

* 単発型

* 多発型

* 小児の円形脱毛症

* ステロイドを減らしたい方

では有効なことがあります。

週1~2回程度の通院が目安です。

「もっと早く始めればよかった」と感じられる患者さんも少なくありません。

8、オルミエント(JAK阻害薬)による治療

重症の円形脱毛症に対する新しい治療として、

オルミエント®(バリシチニブ)

があります。

JAK1/JAK2を阻害することで、毛包を攻撃する免疫シグナルを抑える内服薬です。

効果

国際共同試験では、

36週(約9か月)時点で、

 SALTスコア20以下(頭部脱毛が20%以下)となった割合は4mg群で35.2%でした。プラセボ群では5.3%でした。

また、効果が得られた後に中止すると再発することもあり、2mgへ減量しながら維持することがあります。

アトピー性皮膚炎を合併している方では、両方に効果が期待できる場合があります。

適応

保険適応となるのは、

* 脱毛範囲が50%以上

* 約6か月以上自然再生がみられない

など、重症例に限られます。

副作用

* 上気道感染

* 単純ヘルペス

* 帯状疱疹

* ニキビ

* 肝機能障害

* 高脂血症

* 血球減少

などがあります。

投与前後には採血や胸部レントゲンによる評価が必要です。

9、円形脱毛症の経過と再発

円形脱毛症は、

数か月で改善する方もいれば、年単位の治療が必要な方もいます。

また、一度よくなっても再発することがあります。

ただし、「再発=治らない病気」ではありません。

何年経ってからでも再び発毛することがあります。

焦らず、長い目で付き合っていくことも大切です。

10、お子さまの円形脱毛症について

子どもの円形脱毛症は決して珍しくありません。

「学校で何かあったのでは」

「親のせいではないか」

と保護者の方が悩まれることがあります。

しかし、多くは自己免疫によるものであり、保護者の方の育て方が原因ではありません。

見た目の変化による心理的負担にも配慮しながら、治療方針を一緒に考えていきます。

11、当院の円形脱毛症治療の考え方

円形脱毛症には「これだけやれば必ず治る」という単一の治療はありません。

だからこそ、

* 今どの段階なのか

* どこまで積極的に治療するのか

* 学校や仕事への影響

* 通院しやすさ

* 副作用への考え方

を一緒に相談しながら、患者さんごとの治療を組み立てることが大切だと考えています。

突然の脱毛は不安になります。

その不安を少しでも軽くできるよう、お手伝いできればと思っています。

12、日常生活で気をつけること

極端な食事制限は必要ありません。

ただし、

十分な睡眠、バランスの良い食事、無理なダイエットを避けることは大切です。

また、脱毛部を頻繁に触ったり、自己判断で治療を中断したりせず、定期的に経過を確認していきましょう。

13、よくある質問(Q&A)

 Q. 白髪になって生えてくることはありますか?

あります。再生した毛が最初は白髪や細い産毛のように見えることがあります。その後、徐々に元の髪色や太さに戻ることも少なくありません。

Q. 円形脱毛症は遺伝しますか?

必ず遺伝する病気ではありません。ただし、ご家族に円形脱毛症やアトピー体質、自己免疫疾患がある方では発症しやすい傾向があるとされています。

Q. 染毛剤やヘアカラーは原因になりますか?

円形脱毛症そのものの原因ではありません。ただし、かぶれによる脱毛や他の脱毛症が隠れていることもあります。頭皮に赤みやかゆみがある場合はご相談ください。

Q. 円形脱毛症でウィッグは使った方がよいですか?

もちろん構いません。学校や職場でのストレス軽減につながることもあります。「治療するまでの間の支え」として上手に活用される方も多くいらっしゃいます。

 Q. 治療を始めたらどのくらいで毛が生えてきますか?

個人差がありますが、数か月単位で少しずつ変化していくことが多いです。焦らず経過をみながら治療を続けることが重要です。

Q.円形脱毛で爪に変形ができますか?

円形脱毛症では約20%前後の方に、爪に小さなくぼみ(点状陥凹)などの変化がみられることがあります。これは、円形脱毛症と同じ自己免疫の異常が、爪を作る部分(爪母)にも及ぶためと考えられています。多くは脱毛の改善とともに軽快しますが、爪は伸びるのに時間がかかるため、回復まで数か月を要することもあります。

Q.円形脱毛のダーモスコピー所見は?

ダーモスコピー所見

活動期では感嘆符毛、黒点、断毛などがみられ、固定期では活動性の所見が少なく黄色点が目立つことがあります。回復期になると、短いうぶ毛や再生毛がみられるようになり、発毛のサインと考えられます。





下高井戸駅前皮膚科クリニック

京王線・東急世田谷線「下高井戸駅」北口徒歩0分。世田谷区・杉並区の皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科として、子どもから大人までの円形脱毛症の診療を行っています。「突然髪が抜けて不安」「再発を繰り返している」「重症の治療について相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。