1、まとめ

概念:掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に膿疱(膿をもった小さなブツブツ)、赤み、皮むけ、ひび割れを繰り返す慢性の炎症性皮膚疾患です。水虫や手湿疹と間違われることもあります。

原因:原因は完全には解明されていませんが、喫煙、扁桃炎や歯周病などの病巣感染、金属アレルギー、免疫の異常などが発症や悪化に関係すると考えられています。

治療法:ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬を基本に、症状に応じてオテズラ®などの内服薬を組み合わせ、一人ひとりに合わせた治療を行います。

エキシマライト:塗り薬だけでは改善しにくい症例に有効な保険適用の光線治療です。患部だけに高出力の紫外線を照射できるため、効率よく炎症を抑え、ひび割れや痛みの改善、ステロイド外用量の軽減も期待できます。

日常生活の注意点:禁煙は最も重要な治療の一つです。歯周病や扁桃炎などの病巣感染を治療するのも再発予防につながります。

2、掌蹠膿疱症とは?

掌蹠膿疱症とは、手のひらや足の裏に、膿をもった小さなぶつぶつ、赤み、皮むけ、ひび割れを繰り返す慢性の皮膚病です。

「手荒れが治らない」

「水虫だと思って薬を塗っていた」

「足の裏が割れて歩くのがつらい」

「手のひらに膿のようなブツブツが何度も出る」

このような症状で受診される方が多くいらっしゃいます。

名前に「膿疱」とつきますが、細菌感染による膿ではありません。そのため、人にうつる病気ではありません。ご家族との接触やお風呂、プールで感染することはありません。

症状は長引きやすく、よくなったり悪くなったりを繰り返します。手のひらや足の裏は日常生活で常に使う場所のため、痛みやひび割れがあると、仕事、家事、歩行に大きな支障が出ることがあります。

下高井戸駅前皮膚科クリニックでは、外用薬だけでなく、エキシマライトによる光線治療や内服薬も含めて、症状に合わせた治療をご提案します。

3、掌蹠膿疱症の症状

掌蹠膿疱症では、手のひらや足の裏に小さな水ぶくれのような発疹が出た後、膿をもった黄色っぽいぶつぶつに変化します。

その後、赤み、皮むけ、かさぶた、ひび割れを繰り返します。

足の裏にできると、歩くたびに痛みが出ます。ひび割れが深くなると、立ち仕事や通勤、買い物などの日常動作がつらくなります。

手のひらにできると、物を持つ、手を洗う、消毒する、料理をする、仕事で手を使うといった場面で痛みやしみる感じが出ることがあります。

見た目としても、手のひらの皮むけや赤みが目立つため、人前で手を出しづらいと感じる方もいます。

また、一部の方では、胸の中央、鎖骨のまわり、背中、腰、関節に痛みを伴うことがあります。これは掌蹠膿疱症性骨関節炎と呼ばれ、皮膚症状だけでなく骨や関節にも炎症が起こる状態です。

4、掌蹠膿疱症の原因

掌蹠膿疱症の原因は完全には解明されていません。

ただし、関係が深いと考えられているものがあります。

特に重要なのは喫煙です。掌蹠膿疱症の患者さんでは喫煙者が多く、禁煙によって症状が改善することがあります。治療を頑張っていても、喫煙が続くと改善しにくいことがあります。

また、金属アレルギー、歯科金属、扁桃炎、歯周病、副鼻腔炎などの慢性的な炎症が関係することがあります。

「皮膚の病気なのに、なぜ歯やのどが関係するのか」と不思議に思われるかもしれません。

掌蹠膿疱症では、体のどこかにある慢性的な炎症が免疫を刺激し、手足の皮膚症状を悪化させることがあります。

5、病巣感染とは?

病巣感染とは、体のどこかに慢性的な感染や炎症があり、それが離れた場所の病気を悪化させる状態です。

掌蹠膿疱症では、扁桃炎、歯周病、虫歯、副鼻腔炎などが関係することがあります。

たとえば、のどの炎症が続いている方、歯周病がある方、副鼻腔炎を繰り返している方では、それらの治療を行うことで掌蹠膿疱症が改善することがあります。

もちろん、すべての方に病巣感染があるわけではありません。しかし、繰り返す掌蹠膿疱症、治療してもなかなか改善しない掌蹠膿疱症では、皮膚だけでなく全身を見直すことが大切です。

6、扁桃病巣感染について

扁桃病巣感染とは、扁桃の慢性的な炎症が、免疫反応を介して掌蹠膿疱症を悪化させる状態です。

のどの痛みや発熱を繰り返す方、扁桃炎の後に手足の膿疱が悪化する方、鎖骨周囲の痛みを伴う方では、扁桃との関連を考えることがあります。

この場合、耳鼻科で扁桃の状態を確認し、必要に応じて治療を検討します。

慢性的な関与が強く疑われる場合には、扁桃摘出術が検討されることもあります。ただし、血液検査だけで確定できるものではなく、病歴、症状の変化、耳鼻科での評価を総合して判断します。

7、手湿疹・水虫・汗疱との違い

掌蹠膿疱症は、手湿疹や水虫、汗疱とよく似ています。

手湿疹では、手洗い、洗剤、アルコール消毒、水仕事などで悪化し、赤み、かゆみ、ジュクジュク、ひび割れがみられます。掌蹠膿疱症では、膿をもった小さなぶつぶつを繰り返すことが特徴です。

水虫では、皮むけやかゆみが出るため足の掌蹠膿疱症と間違われることがあります。水虫と掌蹠膿疱症では治療がまったく異なります。必要に応じて顕微鏡検査で白癬菌の有無を確認します。

汗疱、いわゆる異汗性湿疹では、小さな水ぶくれが手足に出ます。掌蹠膿疱症と似ることがありますが、膿疱、赤み、皮むけ、慢性の経過がある場合には掌蹠膿疱症を疑います。

8、検査

診断は主に皮膚の症状から行います。

必要に応じて、顕微鏡検査で水虫の有無を調べます。足の裏の皮むけがある場合、水虫と掌蹠膿疱症が似て見えることがあるためです。

金属アレルギーが疑われる場合には、金属パッチテストを検討します。特に歯科金属との関連が疑われる場合には、歯科との連携が必要になることもあります。

関節や骨の痛みがある場合には、採血や画像検査を検討します。胸の中央や鎖骨付近の痛みがある場合は、掌蹠膿疱症性骨関節炎の可能性があります。

診断が難しい場合や、他の病気との区別が必要な場合には、皮膚生検を行うこともあります。

9、掌蹠膿疱症の治療

掌蹠膿疱症は、一つの治療だけで完全に治るというより、症状の強さや背景因子に応じて治療を組み合わせることが大切です。

基本は外用治療ですが、外用薬だけでは十分改善しない方も少なくありません。

そのような場合には、エキシマライトによる光線治療や、オテズラなどの内服薬を組み合わせます。

また、喫煙、歯周病、扁桃炎、金属アレルギーなどが関係している場合は、それらへの対応も重要です。

10、外用治療

外用治療は掌蹠膿疱症の基本です。

炎症が強い時期にはステロイド外用薬を使用します。手のひらや足の裏は皮膚が厚いため、症状に応じてしっかりした強さの薬が必要になることがあります。

また、活性型ビタミンD3外用薬を併用することがあります。皮膚の角化を整え、慢性的な厚みや皮むけを改善する目的で使います。

ひび割れが強い場合には、保湿剤や保護剤、ステロイドテープを組み合わせることもあります。

「塗っているのに治らない」と感じる場合、薬の種類だけでなく、塗る量、塗る回数、塗るタイミングが合っていないこともあります。診察では、薬の使い方も含めて確認します。

11、エキシマライトによる光線治療

掌蹠膿疱症で当院が特に重視している治療が、エキシマライトによる光線治療です。

掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏という限られた場所に症状が出ることが多いため、患部だけに照射できるエキシマライトと相性のよい病気です。

エキシマライトは、症状のある部分にピンポイントで紫外線を照射し、皮膚の炎症を抑える治療です。保険適用で受けることができます。

特に、

• 外用薬だけでは改善しない

• 足の裏が痛くて歩きにくい

• ひび割れを繰り返す

• 手足だけにしつこく残る

• ステロイドを減らしたい

• 長年よくなったり悪くなったりしている

このような方におすすめしやすい治療です。

治療時間は短く、通常は数分で終わります。痛みはほとんどありません。週1〜2回程度の通院が目安です。

外用薬だけで限界を感じていた方が、エキシマライトを組み合わせることで改善に向かうことがあります。

「もっと早く光線治療を受ければよかった」と言われることもある治療です。

12、オテズラによる内服治療

オテズラは、アプレミラストという成分の飲み薬です。

炎症に関わる免疫の働きを調整することで、掌蹠膿疱症の症状を改善することがあります。

外用薬や光線治療だけでは不十分な方、症状を繰り返す方、通院頻度を減らしたい方では選択肢になります。

副作用として、下痢、吐き気、頭痛、食欲低下などが出ることがあります。特に飲み始めに胃腸症状が出ることがありますが、徐々に落ち着く方もいます。

当院でも症状や適応を確認したうえで処方を検討します。

13、重症例の治療

重症例では、生物学的製剤という注射治療が選択肢になることがあります。

非常に高い効果が期待できる場合がありますが、適応判断や感染症チェック、専門的な管理が必要です。

当院で対応が難しい場合には、総合病院や専門施設へご紹介します。

14、日常生活で気をつけること

掌蹠膿疱症では、日常生活の見直しも治療の一部です。

最も重要なのは禁煙です。喫煙は掌蹠膿疱症の重要な悪化因子です。治療効果を高めるためにも、本気で禁煙をおすすめします。

また、扁桃炎を繰り返す方は耳鼻科受診を、歯周病や虫歯がある方は歯科受診をおすすめすることがあります。

金属アレルギーが疑われる場合には、金属パッチテストや歯科金属の評価を検討します。

手足の皮膚は刺激に弱くなっているため、強くこすらず、ひび割れがある時は保湿と保護を行いましょう。

15、よくある質問(Q&A)

Q. 掌蹠膿疱症は人にうつりますか?

うつりません。膿疱という名前から感染症と思われることがありますが、細菌感染ではありません。ご家族と一緒に生活しても、お風呂やプールに入っても、他人に感染することはありません。

Q. 足の裏の皮むけが水虫ではなく掌蹠膿疱症のことがありますか?

あります。足の裏の皮むけやかゆみだけでは、水虫と掌蹠膿疱症を見分けにくいことがあります。水虫の薬を塗っても改善しない場合は、顕微鏡検査で白癬菌の有無を確認することが大切です。

Q. 掌蹠膿疱症は完治しますか?

長く続くことがある病気です。ただし、適切な治療でかなり良い状態を保てる方も多くいます。外用薬、エキシマライト、内服薬、禁煙、病巣感染の治療を組み合わせることで改善を目指します。


Q. エキシマライトは痛い治療ですか?

通常、痛みはほとんどありません。照射後に軽い赤みやヒリつきが出ることがありますが、照射量を調整しながら行います。手足の限られた病変に使いやすい治療です。


Q. エキシマライトは何回くらい必要ですか?

症状の強さや範囲によります。数回で変化を感じる方もいますが、多くは週1〜2回で数か月単位の治療になります。慢性の病気ですので、焦らず続けることが大切です。

Q. 禁煙すると本当に良くなりますか?

禁煙で改善する方がいます。すべての方が禁煙だけで治るわけではありませんが、喫煙は掌蹠膿疱症の重要な悪化因子です。治療効果を高めるためにも禁煙は非常に大切です。


Q. 歯の金属を外せば治りますか?

金属アレルギーが関係している場合には改善する可能性があります。ただし、すべての方で歯科金属が原因とは限りません。まずは金属パッチテストなどで慎重に判断することが大切です。


Q. 扁桃腺を取ると治りますか?

扁桃病巣感染が関係している場合、扁桃摘出で改善することがあります。ただし、全員に必要な治療ではありません。のどの症状、皮膚症状との関連、耳鼻科での評価を総合して判断します。


Q. 胸や鎖骨が痛いのは関係ありますか?

関係することがあります。掌蹠膿疱症では、胸の中央や鎖骨周囲に痛みが出る掌蹠膿疱症性骨関節炎を合併することがあります。胸や背中、関節の痛みがある場合は必ずご相談ください。

Q. 手だけ、足だけでも掌蹠膿疱症ですか?

あります。手だけ、足だけ、または両方に出る方がいます。症状の出方には個人差があります。


Q. のどの痛みはないのに、鎖骨のあたりだけが激しく痛むことはありますか?

A. はい、あります。

掌蹠膿疱症では、胸の中央から鎖骨のあたり(胸肋鎖骨部)に炎症が起こり、強い痛みを感じることがあります。

この痛みは、扁桃炎などののどの感染をきっかけに悪化することがありますが、のどの痛みや発熱などの自覚症状がまったくない方も少なくありません。

その理由として、自覚症状のない慢性扁桃炎(病巣感染)が背景にある場合や、喫煙、金属アレルギー、免疫の異常など、扁桃炎以外の要因が関与している場合があるためです。

そのため、「のどは痛くないから扁桃とは関係ない」とは言い切れません。手足の膿疱に加えて、鎖骨や胸の中央の痛みが続く場合は、掌蹠膿疱症性骨関節炎の可能性もあるため、一度ご相談ください。

Q. ステロイド外用薬を長く塗っても大丈夫ですか?

適切な強さと期間で使うことが大切です。手足は皮膚が厚いため、必要な時期にはしっかりした外用薬を使うことがあります。ただし、漫然と続けるのではなく、症状に応じて調整します。

Q. オテズラはどんな人に向いていますか?

外用薬や光線治療だけで改善が不十分な方、繰り返し悪化する方、通院頻度を減らしたい方で検討します。胃腸症状などの副作用が出ることがあるため、診察で適応を判断します。

Q. どのタイミングで受診した方がよいですか?

水虫薬を塗っても治らない、手足の膿疱を繰り返す、ひび割れが痛い、歩きにくい、胸や鎖骨が痛い、禁煙しても改善しない場合は受診をおすすめします。診断を見直すことで治療の方向性が変わることがあります。





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