目次
1、尋常性乾癬とは?
尋常性乾癬は、皮膚に赤い盛り上がりができ、その表面に白いフケのような皮むけが付着する慢性の皮膚疾患です。
「湿疹の薬を塗ってもなかなか治らない」
「肘や膝のガサガサが何年も続いている」
「頭皮の赤みやフケが繰り返す」
このような症状で受診される方が多くいらっしゃいます。
乾癬は名前に『かんせん』と付きますが、他の方に感染する(うつる)病気ではありません。触れてもうつりませんし、温泉、プール、学校、職場で周囲に感染させることもありません。安心してください!
ただし、よくなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、長く付き合っていく必要があります。近年は外用薬、光線療法、内服薬など治療選択肢が増えており、以前よりも良い状態を保てる方が増えています。
2、乾癬の症状
乾癬では、境界がはっきりした赤い発疹に、白く厚い皮むけがつくことが特徴です。
特にできやすい部位は、頭皮、肘、膝、すね、腰、お尻などです。こすれやすい場所、刺激を受けやすい場所に出やすい傾向があります。
頭皮に出ると、フケ症や脂漏性皮膚炎と間違われることがあります。肘や膝では、湿疹や乾燥肌と思われることもあります。
爪に症状が出る方もいます。爪が厚くなる、浮く、へこむ、変色するなどの変化がみられることがあります。
3、乾癬の原因
乾癬は、体質に加えて免疫の異常が関係して起こる病気です。
皮膚では通常、細胞がゆっくり生まれ変わっています。しかし乾癬では、このターンオーバーが異常に速くなり、赤み、厚み、白い皮むけが出てきます。
悪化しやすいきっかけとしては、ストレス、睡眠不足、風邪などの感染症、肥満、飲酒、喫煙、摩擦刺激、一部の薬剤などがあります。
また、皮膚を掻く、こする、傷つけることで、その場所に新しく乾癬が出ることがあります。これをケブネル現象といいます。
4、高脂血症・糖尿病・肥満との関係
乾癬は皮膚だけの病気ではなく、全身の炎症と関係する病気として考えられています。
乾癬の患者さんでは、高脂血症、糖尿病、高血圧、肥満、脂肪肝などを合併しやすいことが知られています。これらは「メタボリックシンドローム」と関係が深く、乾癬の悪化にも影響することがあります。
たとえば、体重が増えると体の中で炎症を起こしやすい状態になり、乾癬が治りにくくなることがあります。糖尿病や脂質異常症があると、全身の炎症や血管への負担も増えます。
そのため乾癬では、皮膚の治療だけでなく、体重管理、血糖、脂質、血圧のチェックも大切です。
「皮膚の病気なのに、なぜ生活習慣病の話をするの?」と思われるかもしれません。しかし、乾癬を長く良い状態に保つためには、体全体の炎症を減らすことも重要です。
5、乾癬と間違いやすい病気
乾癬は、脂漏性皮膚炎、湿疹、白癬、扁平苔癬、梅毒、薬疹、ジベル薔薇色粃糠疹、類乾癬などと似ることがあります。
特に頭皮では脂漏性皮膚炎との区別が難しいことがあります。体に丸い赤い発疹がある場合は、体部白癬、いわゆるたむしとの鑑別も必要です。
必要に応じて顕微鏡検査、血液検査、皮膚生検を行います。
6、乾癬の治療
乾癬治療の基本は、外用薬です。
症状が軽い場合は、塗り薬だけでかなり改善することがあります。外用薬だけで不十分な場合には、エキシマライトなどの光線療法、内服薬、生物学的製剤を組み合わせます。
7、外用薬による治療
乾癬の治療で最も大切なのが、塗り薬を正しく使うことです。
「薬をもらったけれど、ベタベタして続かなかった」
「頭皮にうまく塗れない」
「良くなったらやめて、また悪くなる」
という方は少なくありません。
乾癬の外用薬は、症状や部位によって使い分けることが大切です。
1、ステロイド外用薬
赤み、厚み、かゆみ、炎症を抑える薬です。乾癬では基本となる治療です。
肘や膝、すねなどの分厚い皮疹には、比較的しっかりした強さのステロイドを使うことがあります。一方、顔や陰部など皮膚の薄い場所では、弱めの薬を短期間使用するなど調整が必要です。
ステロイドは怖い薬と思われることがありますが、適切な強さ、量、期間で使用すれば非常に有効な治療です。逆に、弱すぎる薬を少量だけ塗っても効果が不十分で、長引いてしまうことがあります。
2、活性型ビタミンD3外用薬
乾癬で速くなりすぎた皮膚のターンオーバーを整える薬です。
ステロイドのように炎症を急速に抑える薬ではありませんが、乾癬の皮膚の厚みや皮むけを改善する目的で使われます。
ステロイドと組み合わせて使うことで、より良いコントロールを目指します。
3、配合外用薬
現在は、ステロイドと活性型ビタミンD3が一緒に入った配合剤がよく使われます。
代表的には、ドボベット、マーデュオックスなどがあります。
1日1回で使いやすく、塗る手間が少ないことが大きなメリットです。薬剤としての安定性も高く、外用治療を続けやすくする工夫がされています。
軟膏、ゲル、フォームなどの剤形があり、部位や好みによって使い分けます。
軟膏はしっかり効かせたい部位に向いていますが、ベタつきが気になることがあります。ゲルやフォームは頭皮や広い範囲に塗りやすく、使用感に優れています。
4、頭皮乾癬の外用薬
頭皮乾癬では、髪の毛があるため薬を塗るのが難しいことがあります。
そのため、ローション、ゲル、シャンプータイプの薬を使い分けます。
コムクロシャンプーは、頭皮に使用しやすいステロイド外用薬です。一定時間頭皮になじませてから洗い流すタイプで、ベタつきが少なく、ローションが苦手な方にも使いやすいことがあります。
ただし、すべての頭皮乾癬に十分効くわけではありません。厚いかさぶたが強い場合には、ローションやフォームを併用することもあります。
5、外用治療を続けるコツ
乾癬は、少し良くなると薬をやめてしまい、また悪化することがあります。
大切なのは、悪い時期にしっかり治療し、良くなってきたら量や回数を調整して維持することです。
「完全にゼロにする」だけを目標にすると疲れてしまうことがあります。まずは、かゆみが少ない、フケが落ちにくい、服に粉がつきにくい、赤みが目立ちにくい状態を目指します。
8、エキシマライトによる光線療法
当院では、乾癬治療にエキシマライトを活用しています。
エキシマライトは、乾癬のある部分だけに紫外線を集中的に照射する保険適用の治療です。外用薬だけでは改善が不十分な方、ステロイドの量を減らしたい方、肘や膝など限られた部位がなかなか治らない方に向いています。
特に、次のような方におすすめしやすい治療です。
• 肘や膝だけ乾癬が残る
• 頭皮の一部だけ治りにくい
• すねや腰の皮疹が慢性化している
• 外用薬を塗ってもすぐ戻る
• なるべく内服薬を使わずに治療したい
エキシマライトは、病変部だけを狙って照射できるため、必要な場所に効率よく治療できます。通院は週1〜2回程度が目安です。
「薬だけではあと一歩良くならない」
「同じ場所だけずっと残る」
という方は、光線療法を組み合わせることで改善のきっかけになることがあります。
9、内服薬について
外用薬や光線療法で十分な改善が得られない場合には、内服薬を検討します。
オテズラは、乾癬の炎症を抑える飲み薬です。外用薬だけでは不十分な方、注射には抵抗がある方、頭皮や爪など生活に支障がある方で選択肢になります。
副作用として、下痢、吐き気、頭痛などが出ることがあります。特に飲み始めに胃腸症状が出ることがあるため、症状をみながら調整します。
シクロスポリンなどの免疫抑制薬を使うこともありますが、腎機能や血圧、感染症などに注意が必要です。
10、生物学的製剤について
中等症から重症の乾癬では、生物学的製剤という注射薬が選択肢になります。
乾癬の炎症に関わる物質を狙って抑える治療で、非常に高い効果が期待できます。
ただし、使用前には結核、B型肝炎などの感染症チェックが必要です。合併症や病状によっては、総合病院や専門施設と連携して治療を行います。
11、乾癬の種類について
・尋常性乾癬
最も多いタイプです。赤い発疹の上に、白いフケのような皮むけがつきます。肘、膝、頭皮、すね、腰、お尻などに出やすく、一般に「乾癬」といえばこの尋常性乾癬を指すことが多いです。
・滴状乾癬
小さな赤い発疹が、しずくのように全身に多発するタイプです。若い方に多く、風邪や扁桃炎、溶連菌感染の後に出ることがあります。
・乾癬性紅皮症
乾癬の炎症が全身に広がり、皮膚全体が赤くなる重症型です。発熱、だるさ、むくみなどを伴うことがあり、専門的な治療が必要です。
・膿疱性乾癬
赤い皮膚の上に、膿のように見える小さなブツブツが出るタイプです。感染による膿ではなく、乾癬の炎症によるものです。発熱など全身症状を伴う場合は重症です。
・乾癬性関節炎
皮膚症状に加えて、関節の痛みや腫れを伴うタイプです。手足の指、膝、腰、かかと、アキレス腱付着部などに症状が出ることがあります。放置すると関節の変形につながることがあるため、早めの診断が大切です。
・爪乾癬
爪に症状が出るタイプです。爪のへこみ、変色、厚み、爪が浮くなどの変化がみられます。爪乾癬は乾癬性関節炎と関連することもあります。
乾癬の患者さんの一部では、関節の痛みや腫れを伴うことがあります。
12、食事・スキンケア・生活習慣
乾癬は食事だけで治る病気ではありません。しかし、食生活や生活習慣が悪化に関係することはあります。
特に肥満は乾癬を悪化させやすい要因です。体重が増えると、体の中で炎症が起こりやすくなり、治療への反応が悪くなることがあります。
食事では、特定の食品を極端に禁止する必要はありません。大切なのは、過食を避け、脂質や糖質を摂りすぎず、野菜、魚、大豆製品、食物繊維を含むバランスのよい食事を心がけることです。
飲酒は乾癬を悪化させることがあるため、飲みすぎには注意が必要です。喫煙も乾癬や全身の炎症に悪影響を与えることがあります。
スキンケアでは、こすらないことが大切です。ナイロンタオルで強く洗わない、石鹸をよく泡立てて、手で優しく洗う、お湯の温度が高すぎるとかゆみが強くなるため、ぬるめ(38〜40℃程度)にするなどを心がけましょう。ナイロンタオルで強く洗ったり、かゆいところを掻いたりすると、ケブネル現象で新しい乾癬が出ることがあります。
入浴後は保湿を行い、皮膚の乾燥を防ぎましょう。乾燥するとかゆみが増え、掻くことでさらに悪化しやすくなります。
乾癬は、薬だけでなく、皮膚を刺激しない生活を続けることでコントロールしやすくなります。
13、よくある質問(Q&A)
Q. 乾癬は周りの人にうつる病気ですか?
いいえ、うつりません。乾癬は細菌やウイルスによる感染症ではなく、免疫の異常が関係する炎症性の病気です。温泉、プール、学校、職場、家庭生活で他人に感染させることはありません。
Q. フケが多いだけでも乾癬のことがありますか?
あります。頭皮乾癬では、厚いフケのような皮むけが出ることがあります。脂漏性皮膚炎や単なるフケ症と区別が難しいこともあります。市販シャンプーで治らない、頭皮が赤い、かさぶたのようになる場合は皮膚科で確認しましょう。
Q. 乾癬は完治しますか?
乾癬は慢性的に経過し、よくなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。ただし、治療によりかなり良い状態を維持できる方は多くいらっしゃいます。「完治しないから治療しても無駄」ではありません。
Q. 塗り薬をやめるとすぐ再発します。どうしたらよいですか?
悪い時だけ塗って、良くなったら完全にやめると再燃しやすいことがあります。症状が落ち着いた後も、塗る頻度を減らしながら維持する方法があります。再発しやすい部位では、エキシマライトを併用することもあります。
Q. ステロイド外用薬を長く使うのが心配です。
心配される方は多いです。ステロイドは適切に使えば乾癬治療で非常に有効です。漫然と使い続けるのではなく、部位、強さ、期間を調整し、ビタミンD3外用薬や光線療法を組み合わせることで負担を減らせることがあります。
Q. 頭皮の薬がベタついて続きません。
頭皮乾癬では、薬の使用感が治療継続に大きく影響します。ローション、ゲル、フォーム、シャンプータイプなど選択肢があります。ベタつきが苦手な方は、剤形を変更するだけで続けやすくなることがあります。
Q. エキシマライトは痛いですか?
通常、強い痛みはありません。照射後に軽い赤みやヒリつきが出ることがありますが、照射量を調整しながら行います。塗り薬だけでは残る部分に追加しやすい治療です。
Q. エキシマライトはどのくらい通えばよいですか?
週1〜2回程度が目安です。改善には数回で変化を感じる方もいれば、数か月かかる方もいます。慢性的な病気ですので、焦らず継続することが大切です。
Q. 食事で乾癬は治りますか?
食事だけで乾癬を治すことは難しいです。ただし、肥満、過度の飲酒、糖質や脂質の摂りすぎは悪化に関係することがあります。薬物治療とあわせて、体重管理や生活習慣の見直しを行うことは意味があります。
Q. 糖尿病や高脂血症があると乾癬は悪くなりますか?
悪化に関係することがあります。乾癬は全身の炎症と関係する病気で、糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧を合併しやすいとされています。皮膚だけでなく、全身の健康管理も大切です。
Q. かゆくて掻いてしまいます。掻くと悪くなりますか?
悪くなることがあります。乾癬では、掻いたりこすったりした部位に新しい皮疹が出ることがあります。かゆみが強い場合は、外用薬の調整や保湿、必要に応じてかゆみ止めを検討します。
Q. 日光に当たるとよくなりますか?
適度な紫外線で改善する方はいます。ただし、強い日焼けは皮膚に炎症を起こし、逆に悪化することがあります。自己判断で過度な日光浴をするより、医療機関で光線療法として安全に照射する方が安心です。
Q. 類乾癬とは乾癬ですか?
名前は似ていますが、尋常性乾癬とは別の病気です。薄い赤みや軽いカサつきが長く続く病気で、必要に応じて皮膚生検を行います。大斑状類乾癬では、まれに皮膚リンパ腫との鑑別が必要です。
Q. ジベル薔薇色粃糠疹と乾癬は違いますか?
違います。ジベル薔薇色粃糠疹は若い方に多く、体幹に楕円形の発疹が広がり、多くは6〜8週程度で自然に改善します。乾癬は慢性に繰り返すことが多い病気です。
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