1、ヘルペスとはどんな病気?

「唇がピリピリしてきたと思ったら、水ぶくれができた。」

「疲れると同じ場所に繰り返しできる。」

「陰部に違和感や痛みがあって不安。」

このような症状は、単純ヘルペスウイルスによる感染が原因かもしれません。

ヘルペスは決して珍しい病気ではなく、多くの方が経験する身近な感染症です。一度感染すると、ウイルスは神経の中に潜伏し、体調の変化などをきっかけに再び活動して症状を起こします。

今の医学では体の中からヘルペスを完全に消すことはできません。しかし、早めの治療や再発予防によって、症状を軽くし、治るまでの期間を短くしたり、再発回数や周囲への感染リスクを減らすことは十分可能です。

「いつものことだから」と我慢せず、違和感の段階でご相談ください。

2、口唇ヘルペスについて

口唇ヘルペスは、唇やその周囲に水ぶくれができる病気です。

主に、唇やその周りに発生します。

そのほか、目の周り、鼻、頬、あごにも発生することがあります。

ヘルペスは、神経の中に潜んでいるウイルスが同じ神経を通って皮膚に戻ってくるため、再発すると以前と同じ場所やその近くにできることが多い病気です。ただし、神経の担当範囲の中で少し場所がずれることもあります。

はじめにピリピリ、チクチク、ムズムズといった違和感が出て、その後、小さな水ぶくれが集まってできます。数日するとかさぶたになり、自然に治っていきます。

疲労や寝不足、風邪、強い紫外線などをきっかけに再発することが少なくありません。

また、お子さまにもみられることがあります。

3、初めて口唇ヘルペスに感染した時の症状

口唇ヘルペスの初感染は、生後6か月~5歳頃、特に1~3歳頃に多いとされています。ただし、ほとんどは症状がなく気づかないまま感染しています。まれに高熱やたくさんの口内炎を伴う『ヘルペス性歯肉口内炎』として発症することがあります。また、小児期に感染しなかった方では、大人になってから初感染することもあります。」

4、まぶたのヘルペスには注意

まぶたにできたヘルペスの多くは皮膚だけで治りますが、まれに黒目(角膜)まで炎症が広がることがあります。『目が赤い』『まぶしい』『見えにくい』『痛い』といった症状がある場合は、視力に影響することもあるため、早めに眼科で診てもらうことが大切です。

5、アトピー性皮膚炎の方は注意

アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下している方では、ヘルペスが広範囲に広がる「カポジ水痘様発疹症」を起こすことがあります。

急に水ぶくれが増える、発熱を伴う場合には、早めの受診が必要です。

6、性器ヘルペスについて

性器ヘルペスは、陰部や肛門周囲、お尻などにできるヘルペスです。

性行為によって感染することがありますが、決して特別な病気ではありません。

初めて感染した場合には、

* 強い痛み

* 排尿時のしみる感じ

* 発熱

* 足の付け根のリンパ節の腫れ

* 歩くのがつらい

など、比較的強い症状が出ることがあります。

一方、再発の場合は、違和感だけで終わったり、小さな水ぶくれだけで軽く済むこともあります。

7、ヘルペスの症状

ヘルペスでは、水ぶくれができる前に前兆が現れることがあります。

よくみられる症状として、

* ピリピリ、チクチク、ムズムズする

* かゆい

* 熱っぽい感じがする

* 違和感がある

などがあります。

その後、

赤み

軽い腫れ

小さな水ぶくれ

びらん(ただれ)

かさぶた

という経過をたどって治癒します。

ただし、水ぶくれが目立たない場合や、切り傷のように見えることもあります。

8、他の人にうつさないために

症状が出ている間は、水ぶくれの中に多くのウイルスが存在します。

口唇ヘルペスでは、

* キスを控える

* コップや食器の共用を避ける

* 顔用タオルの共用を避ける

* オーラルセックスを控える

* 患部に触れた後は手を洗う

などのことが大切です。

性器ヘルペスでは、

* 性行為を控える

*性行為時はコンドームを着用する

* オーラルセックスを控える

* タオルの共用を避ける

* 患部を触った後は石けんで手を洗う

などのことをおすすめします。

なお、入浴や洗濯済みのタオルから感染する可能性は非常に低いと考えられています。

ただし、症状がない時でもウイルスが排出され、感染することがある点は知っておきましょう。実は性器ヘルペスの感染の多くは、症状がない時(無症候性ウイルス排泄)に起こることがわかっています。

9、ヘルペスの治療

ヘルペスは、できるだけ早く抗ウイルス薬を開始することが重要です。

主な治療薬には、

* ファムビル(ファムシクロビル)

* バルトレックス(バラシクロビル)

* ゾビラックス(アシクロビル)

などがあります。

内服後すぐに症状が改善しないこともありますが、自己判断で中止せず、指示通り最後まで内服することが大切です。

症状が強い場合には、点滴治療が必要になることもあります。

10、PIT(再発時自己判断治療)とは

再発を繰り返し、「ヘルペスが出そうな前兆がわかる」という方では、PIT療法という治療法があります。

あらかじめ薬を処方しておき、

「ピリピリしてきた」

「いつもの感じがする」

と思った時点で、ご自身の判断ですぐ内服を開始する方法です。

通常の治療が5日程度の内服であるのに対し、PIT療法では1日だけの内服で済みます。

忙しくてすぐ受診できない方や、毎回悪化する前に治療したい方に選ばれています。

11、再発抑制療法について

性器ヘルペスでは、再発を頻繁に繰り返す方に対して、再発抑制療法を行うことがあります。

これは、少量の抗ウイルス薬を毎日内服することで、再発回数を減らす治療法です。

また、症状のないときにパートナーへ感染させるリスクを明らかに下げる効果があります。

「何度も繰り返してつらい」

「(無症状の時も含めて)パートナーへの感染が心配」

「再発のたびに仕事や生活に支障が出る」

という方はご相談ください。

12、ヘルペス薬の内服方法

ファムビル(ファムシクロビル)

1回1錠(250mg)を1日3回、5日間程度内服します。

バルトレックス(バラシクロビル)

1回1錠(500mg)を1日2回、5日間程度内服します。

PIT療法(ファムビル)

1回4錠(1000mg)を、ピリピリムズムズなどの初期症状が出た時点から6時間以内で内服し、12時間後にもう1回内服します。1日で終了します。

PIT療法(アメナリーフ)

再発性の単純疱疹(口唇ヘルペス・性器ヘルペス)

アメナリーフ 1,200mg(200mg錠×6錠)を食後に1回のみ内服

※ピリピリムズムズなどの初期症状症状が出たらすぐ(6時間以内)に、必ず何かを食べてから(食後30分以内目安)、6錠まとめて服用してください。

再発抑制療法(バルトレックス)

1回1錠(500mg)を1日1回、継続して内服します。

※腎機能障害、薬剤アレルギー、他の内服薬との飲み合わせによっては処方内容が異なる場合があります。

13、再発を防ぐために

ヘルペスを完全に体からなくすことはできません。

そのため、再発しやすいきっかけを知ることが大切です。

再発の誘因として、

* 疲労

* ストレス

* 睡眠不足

* 発熱

* 風邪

* 生理

* 強い紫外線

* 過労

などがあります。

忙しい時ほど無理をしすぎず、十分な休養をとることも再発予防につながります。

14、このような症状は早めに受診を

* 初めてヘルペスが疑われる

* 唇や陰部にピリピリした違和感がある

* 水ぶくれができた

* 強い痛みがある

* 発熱を伴う

* 妊娠中に症状が出た

* アトピー性皮膚炎があり広範囲に広がっている

* 再発を繰り返している

* PIT療法や再発抑制療法を希望している

ヘルペスは「早く治療を始めること」が大切な病気です。迷ったらお気軽にご相談ください。

15、よくある質問(Q&A)

Q. ヘルペスと口内炎はどう見分ければよいですか?

口内炎は口の中の粘膜にできることが多く、ヘルペスは唇やその周囲に小さな水ぶくれが集まってできることが特徴です。ただし、見分けが難しいこともあるため、初めての場合は受診をおすすめします。

Q.薬局の塗り薬と、病院の飲み薬はどちらが良いですか?

A. 症状を早く、きれいに治したい場合は病院の内服薬(飲み薬)を強くおすすめします。

市販の塗り薬は「口唇ヘルペス」の軽度な再発にしか使えず、皮膚の表面にしか効果が届きません。一方、クリニックで処方する飲み薬は、体の内側からウイルスの増殖を強力に抑えるため、劇的に治りが早く、痛みや水ぶくれが広がるのを防ぐことができます。

また、性器ヘルペスや、初めてヘルペスを発症した方には市販薬が使えませんので、自己判断せずにお早めに当院へご相談ください。

Q. 性器ヘルペスを持っている女性の出産の注意点は?

性器ヘルペスがあるからといって、必ず帝王切開になるわけではありません。以前からヘルペスがあり、出産時に症状がなければ普通分娩できることがほとんどです。一方、妊娠後期の初感染や、出産時に水ぶくれやピリピリした前兆症状がある場合には、赤ちゃんへの感染予防のため帝王切開が勧められます。再発を繰り返す方では、36週頃から予防内服を行うこともありますので、妊娠中は必ず産婦人科へ申告してください。

Q.性器ヘルペスは、無症状時はパートナーにうつさない?

性器ヘルペスは、水ぶくれが出ている時だけでなく、症状がない時にもウイルスが出ていることがあります。実際、研究ではウイルスが出ている日の半分以上が『症状のない時』であり、パートナーへの感染もこうした無症候性ウイルス排泄によって起こることが少なくありません。そのため、『症状がないから絶対にうつらない』とは言い切れない病気です。このような場合は、無症状時にも効果のある再発抑制療法を検討しましょう。

Q. パートナーにどう伝えればよいですか?

ヘルペスは珍しい病気ではなく、多くの方が感染経験を持っています。症状がある間は性行為を控え、必要に応じてパートナーにも受診を勧めましょう。

Q. ヘルペスが出ている時にメイクはできますか?

患部への刺激で悪化することがあるため、水ぶくれがある時はできるだけ避けることをおすすめします。使用したリップや口紅は再使用せず、新しいものへの交換を検討してください。

Q. 子どもにキスしてはいけませんか?

症状が出ている間はキスを避けた方が安心です。特に乳幼児では重症化することがあるため注意しましょう。

Q. PIT療法は誰でも受けられますか?

再発性ヘルペスで、前兆を自覚できる方が主な対象です。初感染の方などでは適応にならない場合があります。

Q. ヘルペスは疲れている証拠ですか?

疲労やストレスは再発のきっかけになりますが、それだけが原因ではありません。「最近よく再発する」という方は、生活習慣の見直しや治療法の相談をおすすめします。