注射器を使わないで
食物や花粉、ダニなど41種類のアレルギー検査ができます。(少量の血液は必要です)
赤ちゃん、お子様でも可能です。健康保険適応です。

1.まとめ

どんな病気?
小児アトピー性皮膚炎は、強いかゆみと湿疹を繰り返す慢性の皮膚疾患です。乳児期から始まることが多く、多くのお子様は成長とともに改善しますが、早い時期から適切に治療することが大切です。

診断
湿疹の部位や経過、かゆみの有無などをもとに診断します。必要に応じて、指先から血液1滴で行えるアレルギー検査(ドロップスクリーン)も行っています。

治療
保湿やスキンケア、ステロイド外用薬を基本に、コレクチム、モイゼルト、タクロリムスなどの非ステロイド外用薬も積極的に取り入れています。重症例ではデュピクセントなどの生物学的製剤にも対応しています。

日常生活の注意点
毎日の保湿、こすらない洗浄、爪を短く保つこと、肌への刺激を減らすことが大切です。すべてを完璧に行う必要はなく、ご家庭で続けられる方法を一緒に考えていきます。

その他
当院では、お子様だけでなく、ご家族の不安や負担にも寄り添いながら診療しています。「薬を塗ってもなかなか良くならない」「夜も眠れないほどかゆがる」など、お困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。

2.保護者の方へ最初にお伝えしたいこと

「毎日薬を塗っているのに、また湿疹が出てしまう。」

「夜中にかゆくて泣いてしまう。」

「保湿だけで30分以上かかる。」

「ステロイドを使い続けても大丈夫なのだろうか。」

小児アトピー性皮膚炎のお子様を育てている保護者の方から、このようなお話を毎日のように伺います。

お子様が眠れずにかき壊してしまう姿を見ること、嫌がるお子様をなだめながら毎日薬を塗ること、周囲から「薬を使いすぎでは?」と言われて不安になることは、ご家族にしか分からない大変さがあります。

まず私たちがお伝えしたいのは、ここまで本当によく頑張ってこられましたということです。


アトピー性皮膚炎は、「保湿が足りない」「親の育て方が悪い」「食べ物が悪い」といった一つの原因だけで起こる病気ではありません。生まれ持った体質、皮膚のバリア機能、免疫の働き、汗や乾燥、季節、細菌、ダニなど、さまざまな要因が重なって起こる病気です。

そのため、「一つだけ何かを頑張れば治る」という病気でもありません。

だからこそ、保護者の方だけが責任を感じる必要はありません。

現在では治療法が大きく進歩し、多くのお子様が以前より良い状態を維持できるようになりました。ステロイド外用薬だけでなく、コレクチムやモイゼルトなどの非ステロイド外用薬、さらに重症のお子様ではデュピクセントなどの生物学的製剤も使用できるようになり、「夜も眠れないほどかゆい」「何をしても良くならない」といったケースでも改善できる可能性が高くなっています。

私たちは、お子様の皮膚だけを診るのではなく、ご家族の生活やお気持ちにも寄り添いながら、一緒に治療を続けていきたいと考えています。

3.当院が小児アトピー性皮膚炎の治療で大切にしていること

当院では、「湿疹を治すこと」だけを治療の目標にはしていません。

お子様が夜ぐっすり眠れること、保育園や学校生活を楽しめること、ご家族が毎日のスキンケアに疲れ切ってしまわないことも、同じくらい大切だと考えています。

当院が大切にしていることは、次の6つです。

① お子様のかゆみや湿疹をできるだけ早く改善すること
かゆみを我慢させ続けるのではなく、十分な治療によって早く楽になることを目指します。

② 一人ひとりに合わせた治療を行うこと
年齢や湿疹の部位、生活スタイルはそれぞれ異なります。画一的な治療ではなく、お子様に合った方法をご提案します。

③ 乳幼児期から皮膚を良い状態に保つこと
近年では、乳幼児期からアトピー性皮膚炎を十分にコントロールすることが、喘息や食物アレルギーなどのアレルギー疾患の発症を減らす可能性があることも分かってきました。

「そのうち治るだろう」と様子を見るのではなく、早い時期から皮膚の炎症をしっかり抑えることには大きな意味があります。

④ ステロイドだけに頼らない治療を行うこと
ステロイド外用薬は現在でも最も重要な治療ですが、それだけではありません。コレクチム、モイゼルト、タクロリムスなどの非ステロイド外用薬も積極的に活用し、部位や症状に応じて使い分けています。

⑤ 負担の少ないアレルギー検査を取り入れること
採血が苦手なお子様でも安心して受けられるよう、当院では指先から血液1滴だけで41項目を調べられるドロップスクリーンを導入しています。必要に応じて悪化因子を調べ、より適切な生活指導につなげています。

⑥ 重症のお子様には最新の治療もご提案すること
外用治療だけでは改善が難しい場合には、デュピクセントなどの生物学的製剤も選択肢になります。以前なら長期間つらい症状が続いていたお子様でも、現在は大きく改善できる可能性があります。

4.小児アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

小児アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹を繰り返す慢性の皮膚疾患です。乳児期に発症することが多く、生後2〜3か月頃から顔や頭に湿疹が現れ、次第に首、肘や膝の内側、体、手足へと広がっていくことがあります。

「赤ちゃんの湿疹だから、そのうち治るだろう」と様子を見ていたら、かゆみが強くなり、夜眠れなくなったり、全身に湿疹が広がったりして受診されるお子様も少なくありません。


一方で、小児アトピー性皮膚炎は、早い時期から適切な治療を行うことで、多くのお子様が良い状態を維持できる病気でもあります。実際に、小学生頃までに症状が大きく改善するお子様も多くいらっしゃいます。

大切なのは、「湿疹があるからアトピー」「乾燥しているからアトピー」と自己判断するのではなく、皮膚科専門医が湿疹の特徴や経過を確認し、お子様に合った治療を始めることです。

5.小児アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎は、一つの原因だけで起こる病気ではありません。

発症には、
・生まれ持った体質(アトピー素因)
・皮膚のバリア機能の低下
・免疫の過剰な反応
・汗や乾燥
・ダニやハウスダスト
・黄色ブドウ球菌
・季節や生活環境

など、多くの要因が関係しています。

そのため、「食べ物だけ」「保湿だけ」「薬だけ」で改善する病気ではありません。スキンケア、生活習慣、外用治療を組み合わせながら、皮膚を良い状態に保つことが大切です。

6.乳幼児期から治療することが大切な理由

近年、小児アトピー性皮膚炎では乳幼児期から皮膚の炎症をしっかり抑えることの重要性が注目されています。

皮膚のバリア機能が壊れた状態では、食べ物やダニなどのアレルゲンが皮膚から体内へ入りやすくなります。これが食物アレルギーや喘息、アレルギー性鼻炎などにつながる「アレルギーマーチ」の一因と考えられています。

すべてのお子様で予防できるわけではありませんが、乳幼児期から適切に治療を続けることは、皮膚をきれいにするだけでなく、将来のアレルギー疾患のリスクを減らす可能性も期待されています。

7.食物アレルギーとの関係

「アトピーは食べ物が原因ですか?」というご質問をよくいただきます。

結論から言うと、小児アトピー性皮膚炎の原因が食物アレルギーだけということは、ほとんどありません。

もちろん、卵や牛乳、小麦などを食べた直後にじんましんや顔の赤みが出るような即時型食物アレルギーを合併しているお子様もいます。しかし、毎日続く湿疹の多くは、皮膚の炎症やバリア機能の低下が主体です。

そのため、「アトピーだから卵をやめる」「牛乳を飲ませない」と自己判断で食事制限をすると、栄養不足や成長への影響が心配になります。
当院では、症状や経過を確認し、本当に食物アレルギーが疑われる場合に検査を行い、必要な場合のみ食事指導を行っています。

8.小児アトピーでは乾燥肌の治療も重要です

アトピー性皮膚炎のお子様は、湿疹がないように見える部分でも皮膚が乾燥しやすく、バリア機能が低下しています。

皮膚は本来、皮脂や天然保湿因子、角質細胞間脂質などによって水分を保っています。しかしアトピー性皮膚炎では、この働きが弱くなっているため、乾燥しやすく、刺激にも敏感になります。

乾燥すると、

・かゆくなる
・掻いてしまう
・湿疹が悪化する

という悪循環が起こります。

そのため、湿疹が落ち着いている時期でも、毎日の保湿を続けることが再発予防につながります。

9.小児アトピー性皮膚炎の診断

・かゆみがある
・年齢に応じた特徴的な湿疹がある
・乳児では2か月以上、それ以外では6か月以上繰り返している


という特徴を参考に診断します。

小児アトピーと見た目が似ている病気もあります。

「本当にアトピーなのか」「他の病気ではないか」を見極めることも皮膚科専門医の大切な役割です。

10.指先血液1滴でできるアレルギー検査(ドロップスクリーン)

「採血がかわいそうで検査を受けさせられない。」

そのような保護者の方は少なくありません。

当院では、通常の採血だけでなく、指先から血液を1滴採るだけで41項目のアレルギーを調べられる『ドロップスクリーン』を導入しています。


注射器を使わないため、小さなお子様でも負担が少なく、検査時間も短時間で済みます。

卵、牛乳、小麦、大豆などの食物アレルギーだけでなく、ダニ、ハウスダスト、花粉、動物など幅広い項目を一度に確認できるため、悪化因子を調べたい場合にも有用です。

もちろん、アレルギー検査だけでアトピー性皮膚炎を診断することはできません。


検査結果は症状や診察所見と合わせて判断することが重要です。当院では、検査結果の数字だけを見るのではなく、お子様の生活や症状に本当に関係しているかを丁寧に説明し、必要以上の食事制限や生活制限につながらないよう心がけています。

11.小児アトピー性皮膚炎の治療

治療の目標は「湿疹を治すこと」だけではありません
小児アトピー性皮膚炎の治療では、「湿疹がなくなること」だけを目標にはしていません。

私たちが大切にしているのは、

  • 夜ぐっすり眠れること
  • 日中にかゆみを気にせず遊んだり勉強したりできること
  • 掻き壊しを減らし、皮膚をきれいな状態に保つこと
  • 保護者の方のスキンケアの負担を少しでも軽くすること

です。

アトピー性皮膚炎は、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す病気ですが、適切な治療を続けることで、多くのお子様が普段どおりの生活を送れるようになります。

現在は治療法が大きく進歩し、以前なら改善が難しかった重症のお子様でも、良好な状態を維持できる時代になっています。

当院では、お子様一人ひとりの年齢、湿疹の部位、重症度、生活環境に合わせて、最適な治療をご提案しています。

1.外用薬

外用薬は小児アトピー性皮膚炎治療の中心です

アトピー性皮膚炎では、皮膚の炎症を抑えることが最も重要です。そのため、外用薬は現在でも治療の中心となります。

以前はステロイド外用薬がほとんど唯一の治療でしたが、近年はコレクチム、モイゼルト、タクロリムス軟膏などの非ステロイド外用薬が登場し、年齢や部位、症状に応じて使い分けられるようになりました。

「ステロイドだけ」「非ステロイドだけ」と考えるのではなく、それぞれの長所を生かして組み合わせることが、現在の小児アトピー性皮膚炎治療の基本です。

外用薬使用年齢主な特徴
ステロイド外用薬年齢・部位に応じて使用炎症を最もしっかり抑える基本薬
小児プロトピック軟膏(タクロリムス)2歳以上顔や首などに使いやすい非ステロイド外用薬
コレクチム軟膏生後6か月以上刺激感が少なく幅広く使いやすい
モイゼルト軟膏生後3か月以上赤ちゃんから使用できる非ステロイド外用薬
ブイタマークリーム12歳以上1日1回で使用できる非ステロイド外用薬


1-1.ステロイド外用薬

小児アトピー性皮膚炎で最も大切な治療薬です

「ステロイドはできれば使いたくありません。」
診察室で最も多くいただくご相談です。

しかし、アトピー性皮膚炎は皮膚に炎症が起きている病気です。

炎症を十分に抑えなければ、

  • かゆみが続く
  • 掻き壊してしまう
  • 湿疹が慢性化する
  • 色素沈着や皮膚が厚くなる

という悪循環になってしまいます。

ステロイド外用薬は、この炎症を最も確実に抑えられる薬であり、小児アトピー性皮膚炎治療の基本です。

60年以上使用され、安全性や効果について十分な実績があります。

年齢や部位によって使い分けます

ステロイドにはさまざまな強さがあります。

例えば、

  • おむつ部位

など皮膚が薄いところには弱めの薬を、

腕や脚など炎症が強い部位では必要に応じて強めの薬を使用します。

「強い薬をずっと使う」のではなく、

必要な時に、必要な強さを、必要な期間だけ使う

ことが重要です。

副作用について

適切に使用すれば、安全性の高い薬です。

一方で、

  • 顔に強い薬を長期間使用する
  • 自己判断で同じ薬を何か月も塗り続ける

などの場合には、

  • 皮膚が薄くなる
  • 毛細血管が目立つ
  • 毛包炎

などが起こることがあります。

当院では定期的に診察しながら、症状が改善すれば非ステロイド外用薬へ切り替えたり、塗る回数を減らしたりして、安全に治療を進めています。

1-2.小児プロトピック軟膏(タクロリムス)

顔や首に非常に使いやすい非ステロイド外用薬です

タクロリムス軟膏は、免疫の過剰な反応を抑えて炎症を改善する薬です。

ステロイドではないため、

  • 皮膚が薄くなる
  • 毛細血管が目立つ

といった副作用はありません。

そのため、

  • まぶた周囲

など、長期間ステロイドを使いにくい部位で非常に活躍します。

ヒリヒリすることがあります

使い始めに、

  • ヒリヒリ
  • 熱感
  • ピリピリ

を感じることがあります。

これは薬が効かないという意味ではなく、炎症が強いほど起こりやすい反応です。

多くは数日から1週間程度で軽くなります。

刺激が強い場合には、最初だけステロイドで炎症を抑えてから切り替える方法もあります。

1-3.コレクチム軟膏

現在、小児アトピー性皮膚炎で使いやすい非ステロイド外用薬の一つです

コレクチム軟膏は、JAKという炎症の伝達を抑える新しい外用薬です。

生後6か月から使用でき、

刺激感が少なく、

  • 手足

まで幅広く使用できます。

ステロイドを減らしていく時にも活躍します

当院では、

炎症が強い時はステロイドでしっかり改善させ、

その後コレクチムへ切り替える治療をよく行っています。

これにより、皮膚を良い状態で維持しやすくなります。

副作用

毛包炎やニキビなどがみられることがありますが、

ステロイドで問題となる皮膚萎縮はほとんどありません。

1-4.モイゼルト軟膏

赤ちゃんにも使いやすい新しい非ステロイド外用薬です

モイゼルト軟膏は、PDE4という炎症に関わる物質を抑える薬です。

生後3か月から使用できるため、乳児期から治療に取り入れやすいことが大きな特徴です。

また、

  • 刺激感が少ない
  • 顔にも使いやすい
  • 長期間使用しやすい

というメリットがあります。

軽症から中等症のお子様では、ステロイドを減らしながら皮膚を維持する目的で使用することも多くあります。

副作用は比較的少なく、毛包炎や軽い刺激感などがみられることがありますが、安全性の高い薬と考えられています。

2.注射薬(生物学的製剤)

重症の小児アトピー性皮膚炎でも、大きく改善できる時代になりました

以前は、外用薬や保湿を頑張っても改善しない重症の小児アトピー性皮膚炎では、「仕方がない」と考えられることも少なくありませんでした。
しかし現在は、生物学的製剤(バイオ製剤)の登場により、治療は大きく進歩しています。

これらは、アトピー性皮膚炎の原因となる炎症をピンポイントで抑える注射薬です。従来の治療だけでは十分に改善しなかったお子様でも、かゆみや湿疹が大きく改善し、夜眠れるようになったり、学校生活を快適に送れるようになったりするケースが増えています。

当院では、十分な外用治療を行っても改善が難しい中等症〜重症のお子様に対して、生物学的製剤も積極的な選択肢としてご提案しています。

薬剤使用年齢特徴
デュピクセント生後6か月以上使用実績が最も豊富な代表薬
ミチーガ6歳以上強いかゆみに効果が期待できる
アドトラーザ15歳以上IL-13を標的とした薬剤
イブグリース12歳以上IL-13を標的とした薬剤
2-1.デュピクセント(デュピルマブ)

現在、小児重症アトピー性皮膚炎で最も重要な治療薬です

デュピクセントは、小児アトピー性皮膚炎の治療を大きく変えた薬と言っても過言ではありません。

アトピー性皮膚炎では、IL-4とIL-13という物質が炎症やかゆみに深く関わっています。デュピクセントは、この2つの働きを抑えることで、湿疹とかゆみを改善します。

現在では、生後6か月から使用でき、日本国内でも多くのお子様に使用されている、最も実績の豊富な生物学的製剤です。

このようなお子様で検討します

次のような場合には、デュピクセントを検討することがあります。

  • 強いステロイド外用薬でも改善しない
  • 毎日全身に外用しても再発を繰り返す
  • 夜間のかゆみで眠れない
  • 学校生活や日常生活に支障がある
  • 保護者の外用負担が非常に大きい

外用薬を十分に行っても改善が難しい場合には、大きな治療効果が期待できます。

効果

デュピクセントでは、

  • かゆみが減る
  • 夜ぐっすり眠れる
  • 掻き壊しが減る
  • 湿疹が改善する
  • 外用薬を減らせる

などの改善を比較的早い段階から実感されることがあります。

一方で、顔の湿疹は体より改善しにくいことがあり、その場合は外用薬を組み合わせながら治療します。

副作用

比較的安全性の高い薬ですが、

  • 結膜炎
  • 単純ヘルペス
  • 注射部位の赤み

などがみられることがあります。

重い副作用は比較的少なく、小児でも安心して使用しやすい薬剤と考えられています。

当院での治療

当院で導入し、継続治療も行っています。

年齢や体重によって投与量が異なります。また、ご希望があれば、ご自宅で注射を行う自己注射への切り替えも可能です。

2-3.アドトラーザ・イブグリース

アドトラーザ、イブグリースも、生物学的製剤です。

いずれもIL-13という炎症物質を標的とした薬で、デュピクセントで十分な効果が得られない場合などに検討されることがあります。

3.内服薬(JAK阻害薬)

飲み薬でも高い効果が期待できます

現在では、重症の小児アトピー性皮膚炎に対して、飲み薬による治療も選択できるようになりました。

代表的な薬には、

  • リンヴォック
  • サイバインコ
  • オルミエント

があります。

これらはJAK阻害薬と呼ばれ、炎症を起こす情報伝達を抑えることで、高い治療効果が期待できます。

特にリンヴォックは、比較的早期からかゆみや湿疹の改善が期待できる薬です。

一方で、

  • 感染症
  • 肝機能異常
  • コレステロール上昇
  • 血球減少

などに注意が必要なため、開始前と治療中には採血や胸部レントゲン検査を行い、安全性を確認しながら治療を進めます。

そのため、小児ではまず外用薬やデュピクセントなどを優先し、必要に応じてJAK阻害薬を検討することが一般的です。

12.光線療法(エキシマライト)

外用薬だけでは十分に改善しない場合には、紫外線を利用した光線療法(エキシマライト)も治療の選択肢になります。

炎症を抑え、かゆみを改善する効果が期待でき、ステロイド外用薬の使用量を減らせることもあります。

治療は短時間で終了し、痛みはありません。症状に応じて週1〜2回程度行います。

13.当院の治療方針

現在の小児アトピー性皮膚炎治療は、「この薬だけを使う」という時代ではありません。

当院では、

  • 保湿・スキンケア
  • ステロイド外用薬
  • タクロリムス軟膏
  • コレクチム軟膏
  • モイゼルト軟膏
  • 光線療法
  • デュピクセントなどの生物学的製剤

必要に応じたJAK阻害薬


を、お子様一人ひとりの年齢や症状、生活スタイルに合わせて組み合わせています。

私たちが目指しているのは、「なるべく薬を使わないこと」ではありません。

必要な治療を適切なタイミングで行い、お子様がかゆみに悩まない毎日を送り、ご家族が笑顔で過ごせることです。

14.日常生活の注意点

完璧を目指さなくても大丈夫です

「保湿を毎日2回と言われても続かない。」

「毎日掃除をする時間がない。」

「子どもが薬を嫌がって塗れない。」

診察室では、このようなお悩みをよく伺います。

アトピー性皮膚炎では生活習慣も大切ですが、すべてを完璧に行う必要はありません。

保護者の方が疲れ切ってしまっては、治療は長続きしません。

大切なのは、「続けられる方法」を見つけることです。

当院では、ご家庭の生活スタイルも考えながら、無理なく続けられるスキンケアをご提案しています。


入浴は「ぬるめ・短め・こすらない」

お風呂は熱すぎるとかゆみが強くなるため、


・冬は39℃前後

・夏は38℃


を目安にしましょう。

体を洗う時は、

十分に泡立てた石けんを手に取り、

タオルでゴシゴシ洗うのではなく、

泡でなでるように洗うことが大切です。

ジュクジュクしている時も、細菌感染を防ぐため、入浴して皮膚を清潔に保ちましょう。



保湿は「できる範囲」で続けましょう

保湿はアトピー性皮膚炎治療の基本です。

入浴後5分以内に塗ることが理想ですが、

体が大きくなった小学生では、

毎日全身に朝晩塗ることは現実的ではありません。

その場合は、

  • 夜だけ
  • 首だけ
  • 肘、膝だけ


などでも構いません。



肌着や衣類にも少し気を配りましょう

衣類の刺激だけでも、かゆみが悪化することがあります。

おすすめなのは、

  • 綿素材
  • 肌ざわりの良いもの
  • タグは服から除去する


です。



掃除は寝室を優先しましょう
ダニやハウスダストは悪化因子になることがあります。

しかし、

「毎日家中を掃除してください」

では現実的ではありません。

まずは、

  • 寝室
  • ベッドや布団周囲


を優先しましょう。

シーツを定期的に洗うだけでも十分効果があります。



爪は短く

かゆみは我慢できません。「掻いちゃダメ!」と言われても、お子様には難しいものです。

そのため、

  • 爪を短くする
  • 夜だけ綿手袋を使う
  • 保湿や薬を早めに塗る


など、掻いても傷になりにくい工夫をおすすめしています。



心のケアも治療です

アトピー性皮膚炎では、

  • 見た目
  • 睡眠不足
  • 学校生活


など、

皮膚以外にも大きな影響があります。

お子様自身が

「自分だけ違う」

と思ってしまうこともあります。

また、

毎日のスキンケアは、

保護者の方にも大きな負担になります。

当院では、

お子様だけではなく、

ご家族全体の生活が少しでも楽になることも治療目標にしています。

15.よくある質問(Q&A)

Q. 小児アトピーは治りますか?

成長とともに、皮膚のバリア機能が整って自然と改善していくお子様は多くいらっしゃいます。ただし、改善する時期には個人差があります。適切な治療で「かゆみのない良い状態」をキープしながら、健やかな成長を一緒に待ってあげることが大切です。


Q. ステロイドは安全ですか?


医師の指示どおり、症状に合わせて薬の強さや回数を調整すれば、とても安全性の高い薬です。自己判断で急に中止したり、弱い薬だけで様子を見続けたりすると、かえって炎症が長引いてしまうことがあります。「症状が悪い時はしっかり使い、良くなったら適切に減らしていく」ことが、副作用を防ぎながらきれいに治す近道です。


Qステロイドは弱いものを長く塗った方が安全?


弱すぎる薬を長期間塗り続けても、皮膚の奥の炎症(火種)が消えずに長引いてしまうことがあります。炎症の強さに合わせて「最初は適切な強さの薬をしっかり使って一気に火を消し、良くなったら段階的に薬を弱めていく」方が、結果的に使う期間も短くなり、副作用を抑えて早くきれいに治すことができます。


Q. 保湿だけで治りますか?


保湿はお肌のバリア機能を守るためにとても重要ですが、すでに赤みやかゆみ(炎症)が起きている場合は、保湿だけで火を消すことはできません。「外用薬でしっかり炎症を抑え、保湿剤でお肌の土台を整える」という両方のケアを組み合わせることで、肌荒れを繰り返さない良い状態を維持し


Q. 食物アレルギーが原因ですか?やすくなります。


必ずしも食べ物だけが原因とは限りません。むしろ、肌の湿疹(バリア機能の低下)を放置することが食物アレルギーを引き起こす原因になることも分かっています。自己判断で食事制限をすると、お子様の栄養不足につながるリスクもあるため、まずは「外用薬と保湿で肌をきれいに整えること」を最優先にし、必要に応じてアレルギー検査を行っていきます。


Q. プールは入れますか?


症状が安定していて、患部からジクジクとした滲出液(しんしゅつえき)が出ていなければ、多くのお子様でプールは可能です。プール後はできるだけ早くシャワーで塩素をしっかり洗い流し、お早めに保湿剤を塗りましょう。もし炎症が強く出ている時は、医師と相談して判断しましょう。


Q. デュピクセントは子どもでも使えますか?


生後6か月以上から使用できます。外用薬だけでは改善が難しい中等症〜重症のお子様で検討します。


Q. デュピクセントを始めたら一生続けますか?


そのようなことはありません。症状が安定すれば減量や中止を検討することもあります。


Q. デュピクセントを使えば塗り薬は不要になりますか?


外用薬の回数や量を大幅に減らせることは多いですが、基本的には保湿剤でのスキンケアや、軽い炎症が残る部分への外用薬の併用を続けた方が、より良い状態を安定して維持できます。お肌の様子を見ながら、医師と相談して外用薬を上手にステップダウン(減量)させていきましょう。


Q. 非ステロイド外用薬だけで治療できますか?


比較的軽症な場合は可能なこともありますが、赤みやかゆみが強いときは、まずステロイド外用薬で一気に炎症を抑え、その後、非ステロイド外用薬に切り替えて良い状態を維持していく(プロアクティブ療法など)方が、結果的に早くきれいに改善することが多くあります。


Q. 子どもが薬を嫌がります。


毎日続けることは本当に簡単ではありませんよね。ベタつきにくいお薬(剤形)への変更や、塗る回数を減らす工夫など、お子様やご家族の生活スタイルに合わせた方法を一緒に考えていきましょう。


Q. 採血が苦手です。


注射が苦手な方や、小さなお子様でも安心して受診いただけるよう、当院では指先から血液1滴(41項目)でアレルギーを調べられる「ドロップスクリーン」を導入しています。保険適用での検査が可能ですので、ご希望の際はお気軽にご相談ください。

※注射による通常の採血検査が適している場合もありますので、医師が状態を見てご提案します。


Q. 兄弟もアトピーになりますか?


アレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)は遺伝することがありますが、必ず発症するとは限りません。近年、「赤ちゃんの頃からしっかり保湿をして肌のバリアを守ることで、アトピーの発症を予防できる」ということが分かってきています。下のお子様のスキンケアについてもお気軽にご相談ください。


Q. セカンドオピニオンは受けられますか?


もちろん可能です。現在の治療内容(お薬手帳やこれまでの経過)を確認した上で、より良い治療方法や選択肢を一緒に考えていきます。「今の治療でなかなか良くならない」「他の選択肢も聞いてみたい」という時は、どうぞお気軽にご相談ください。