当院からのメッセージ

アトピー性皮膚炎は子どものころから発生し(大人になってから発症するケースもあります)、人によっては長引く皮膚の病気です。お顔や首など見えるところが赤くなったり、強いかゆみが続いてつい引っかいたりしてずいぶんとお辛いこともあると思います。

当院ではアトピー性皮膚炎でお悩みの患者様に、できる限りの皮膚科専門医ならではの治療を提供して、少しでも快適な生活を送っていただけるようにお手伝いをさせていただきます。 アトピー性皮膚炎は、きちんとした治療でコントロールしていくと長い目で見ればいずれ症状が出なくなっていく方も多いです。 希望をもっていただければと思います。 逆に炎症がコントロールされない状態を繰り返されていますと、皮膚が固く厚くなったり炎症による色素沈着が出たり、症状のコントロールがどんどんつきづらくなっていきます。 症状の波がありくりかえしのある病気ではありますが、適切な治療を継続して症状をコントロールしていくことが改善につながっていきます。

長年うまくお薬が使えなかったためにコントロールがつきかった方で、皮膚が厚く硬くなっていたり、逆にうすくなってしまっていたり、かゆみが続いてお辛い、という方でも、これからでも根気よく継続して正しい治療をはじめれば症状は必ずすこしずつ改善します。症状に繰り返しもあり、現状強いかゆみやお肌のつらい症状が続いている方では、より根気よくあきらめず頑張っていただくことは必要ですが、適切にお薬を使ってコントロールしていくことで徐々に楽に過ごせるようになりますので、あきらめず頑張っていただきたいです。

また、家事やお仕事が忙しく通院できなかったり、時間が無くて塗ることできなかったり、塗っているのに良くならなかったり。。。こんな時は一度だけでもクリニックまでおいでください。塗り方のアドバイスや治療の大切さをお話ししたいと思います。

そして、ステロイドが不安な患者様。ご不安はごもっともですが、まずは「正しい医学情報」を聞いてみませんか?その上で、ご納得のゆくアトピー性皮膚炎の治療を行っていきます。

アトピー性皮膚炎は不安や悩みが大きい病気です。患者様がニコニコと笑っていただけるようにご一緒に治療のお手伝いをさせていただけませんか?

アトピーってどんな病気?

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。赤ちゃんでは生後2〜3か月ごろに顔から始まることが多く、その後、肘や膝の内側・体幹などにも広がることがあります。全身の乾燥しやすさ(ドライスキン)も特徴のひとつです。

この病気は、アトピー素因と呼ばれる体質が関わります。

  • 本人または家族に、気管支喘息・アレルギー性鼻炎/結膜炎・アトピー性皮膚炎の既往がある
  • ダニ・ホコリ・食物などでIgE抗体を作りやすい体質がある

原因はひとつに絞れません。遺伝的素因 × 生活環境が複雑に絡み合って発症します。アレルギー反応だけでは説明できないため、たとえば「ハウスダスト対策だけ」では十分に改善しないこともあります。

肌が乾く理由とケアの考え方

皮膚のうるおいは、皮脂/天然保湿因子/角質細胞間脂質の3要素で守られています。アトピー性皮膚炎ではこれらが減りやすく、バリア機能が低下 → 刺激に敏感 → かゆみ増悪という悪循環になりがちです。

ただし、適切な保湿とスキンケアで肌状態は整えられます。下高井戸駅前皮膚科クリニックでは、年齢や肌質に合わせて使う量・塗る順番・タイミングまで具体的にお伝えしています。

当院のアプローチ

私たちはまず、かゆみと炎症を素早く沈め、生活の質(QOL)を上げることを重視します。基本は外用療法・内服治療・保湿・スキンケア。必要に応じて、JAK阻害薬生物学的製剤といった新しい治療も選択肢に。

アトピー性皮膚炎は長期的には良くなっていく病気です。小さな疑問でも遠慮なくご相談ください。患者さんのお話の中に治療を前に進めるヒントが隠れています。

どうやって診断する?

以下の所見を組み合わせて総合的に判断します。

  • はっきりしたかゆみがある
  • 特徴的で左右対称の湿疹が出る
  • 寛解と増悪を反復(乳児は2か月以上、その他は6か月以上)
  • 多くの方にアトピー素因を認める

原因の手がかりを探る検査

健康保険で実施可能です。

採血:特異的IgE抗体、TARC、好酸球数、総IgEなどで炎症の勢いや関連アレルギーを確認。花粉症・食物アレルギーのチェックも同時にできます。

パッチテスト:化粧品・金属・染毛剤など身近な物質によるかぶれの有無を評価。顔の赤みや手荒れが続く方に有用です。
1週間に4回の受診が必要です。

目標(ゴール)設定

第一の目標は、日常生活に支障が出ないレベルまで症状をコントロールすること。乳児発症例では10歳ごろまでに改善することも多く、成人でも長い目で見ると落ち着くケースが大半です。通院が不要になるその日まで、下高井戸駅前皮膚科クリニックが伴走します。

外用療法(塗り薬)

アトピー治療の土台は外用薬です。必要部位に的確に使えるため全身負担が少ないのが利点。現在は非ステロイド薬も充実し、選択肢が広がっています。

ステロイド外用薬(副腎皮質ホルモン)

炎症を速やかに抑える基本薬。年齢・部位・皮疹の強さに合わせてランクを調整します。
「ステロイドが不安」という声は少なくありませんが、専門医の指導のもと適切に使えば安全で効果的です。塗り分けや休薬の考え方までご説明します。

非ステロイド外用薬

刺激が少なく、長期の維持管理に向く薬も増えています。特徴に応じて使い分けます。

薬剤名特徴使用可能年齢
ステロイド外用薬強い炎症を抑える基本治療薬全年齢
プロトピック小児用軟膏非ステロイド免疫抑制剤2歳以上
コレクチム軟膏JAK阻害外用薬6か月以上
モイゼルト軟膏PDE4阻害外用薬3か月以上
ブイタマークリーム新しい非ステロイド外用薬。1日1回でOK12歳以上

各薬の補足

  • プロトピック軟膏(タクロリムス):免疫反応を調整。ヒリヒリ感は使ううちに軽くなることが多いです。
  • コレクチム軟膏(デルゴシチニブ):JAK阻害の外用。幅広い年齢に使用可能。
  • モイゼルト軟膏(ジファミラスト):PDE4阻害で刺激が非常に少ないのが特長。
  • ブイタマークリーム:1日1回で管理しやすい非ステロイド薬。

保湿(毎日のベースケア)

保湿は予防と再発抑制の要です。ヒルドイド、ヘパリン類似物質、ワセリン系などを毎日継続することでバリア機能を守れます。時間や費用の都合で全身が難しいときは悪化しやすい部位だけでも入浴後に塗りましょう。

名称特徴・説明
ヒルドイド使用感・効果に優れるがやや高価
ヘパリン類似物質種類が多く、使用感はさまざま
パスタロン角質を柔らかくする。刺激あり
白色ワセリン水分蒸発を防ぐ保護剤
プロペト白色ワセリンより純度が高く低刺激
ヒルドイドの種類特徴
ヒルドイドクリームベタつかず使いやすい
ヒルドイドソフト軟膏しっとり感が強く乾燥部位に適す
ヒルドイドローション広範囲に塗りやすい
ヒルドイドフォーム泡状で軽い使用感

内服(のみ薬)

抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)

かゆみを和らげる目的で使用します。眠気の少ないタイプもあり、1日1〜2回の内服が一般的です。炎症そのものを抑える力は弱いため、外用療法を補助する位置づけです。

漢方

複数の生薬で体のバランスを整え、治る力を引き出すのが漢方の考え方です。即効性は西洋薬ほどではありませんが、体質改善を目指す選択肢として当院でも処方可能です。

免疫抑制剤

通常治療で難渋する重症例に用います(例:ネオーラル[シクロスポリン])。効果は高い一方で、腎機能や血中濃度の管理が必須です。治療中は2〜4週ごとの採血で副作用(腎機能異常など)をチェック。下高井戸駅前皮膚科クリニックでは安全性最優先の監視体制で実施します。

新しい内服薬:JAK阻害薬

炎症を抑える新機序の内服薬です。発現が早く効果が期待できますが、薬剤費が高めで、免疫抑制・血球減少などのリスクもあるためレントゲン・採血による定期評価が必要です。

商品名成分名開始年齢胸部レントゲン採血
リンヴォックウパダシチニブ12歳以上必要必要
サイバインコアブロシチニブ12歳以上必要必要
オルミエントバリシチニブ2歳以上必要必要

検査スケジュール:開始前・1か月後・3か月後・6か月後、以後6か月ごとに評価します。

注射薬(生物学的製剤)

中等症以上で使用できる抗体医薬です。2025年現在は以下の4種が保険適用:デュピクセント/ミチーガ/アドトラーザ/イブグリース。なかでもデュピクセントは高い有効性で、多くの方の皮膚炎・かゆみを大きく改善しています。JAK阻害薬に比べ免疫抑制や感染の副作用が少なく、レントゲン不要なのも利点です。

商品名成分名開始年齢投与間隔作用機序
デュピクセントデュピルマブ6か月以上2〜4週ごと※IL-4・IL-13をブロック(痒疹も適応)
アドトラーザトラロキヌマブ15歳以上2週ごとIL-13をブロック
イブグリースレブリキズマブ12歳以上初月2週ごと×2回→以降2〜4週ごとIL-13をブロック
ミチーガネモリズマブ6歳以上4週ごとIL-31を抑制(痒疹にも効果)

※デュピクセントは年齢・体重で用量・間隔が変わります

そのほかの治療

紫外線治療

外用で十分な効果が出にくい方に有効です。
下高井戸駅前皮膚科クリニックではターゲット型エキシマライトを保険診療で受けられます。

  • エキシマライト:小範囲の病変に集中照射(白斑・掌蹠膿疱症・痒疹などに有効)

通院で安全に継続できます。

生活でできる工夫

生活でできる工夫

項目ポイント
入浴お湯はぬるめ。泡立てた低刺激石けんでやさしく洗う。
保湿乾燥は悪化因子。入浴後すぐに保湿剤を塗る。
肌着綿などやわらかい素材を選ぶ。
掃除ダニ・ホコリ対策にこまめな掃除機がけ。
湿度目安は50〜60%。乾燥しすぎ・湿りすぎに注意。
ひっかき傷防止に短く整える。
ストレスストレス・睡眠不足は悪化要因。まずはかゆみコントロールを。

ポイント:毎日の小さな積み重ねが再燃の予防につながります。無理のない範囲で続けましょう。

むすびに

アトピー性皮膚炎は時間とともに落ち着くことが多い病気です。ただし、改善までの期間や再燃のしやすさは個人差があります。根治薬はまだありませんが、現在は症状を十分にコントロールできる治療が揃っています。 下高井戸駅前皮膚科クリニックは、かゆみや見た目のつらさを少しでも軽くし、「毎日を心地よく過ごせる」ようサポートします。あせらず一緒に前へ進みましょう。